[かむカム08号/1994年12月]より 歯のまめ知識かむカム歯の話

よくかむ人は元気です!

今回はこのかむことの効用を考えてみることにしましよう。

見直したい固い食べ物の大切さ!

あごの骨も筋肉も丈夫に

乳児のあごの骨はかむトレー二ングによって、そしゃく力を高め、歯並びを整えながら段々と顔形を形成していく。
かむ行為によって歯はもちろん、歯ぐき、あごの骨、咀嚼筋、舌、 唇などがうまく働いてその機能を増して行く。歯ぐきの骨の細胞はカルシウムなどの栄養をかむことによって取り込む。ところがこのかむ力が弱すぎると代謝機能がうまく働かず骨が発育不良になる。次第に歯ぐきの抵抗力も弱まって歯が抜けてしまう。

歯並びが左右でズレていると、あごの関節に加わる力に左右で差ができてしまう。これが成長期の子供だと、何と顔の輪郭にゆがみができる。ひどくなるとこれが背骨にさえも影響を及ぼして、脊柱そくわん(内側に曲がってしまう)の原因にもなる。かめばかむほど筋肉が正常に作用して姿勢が良くなり、運動能力が高まる。

かむということは、首すじ、胸、肩、背中にある12種類(左右1対で24個)の筋肉を総動員して下顎を動かすことである。上半身をまっすぐに伸ばしていないと、下顎を正しく動かすことができない。
逆にいえば、よくかんでいると自然に姿勢が良くなる。運動能力も高まると同時に、背骨が曲がることによって惹起される多くの全身的な病気の予防にもなる。

頭の働きがさわやかに

咀嚼運動は横隔膜の上下運動や手足の屈伸運動などと共に、心臓の補助として重要な役割を果している。これらの運動によって体の各部分の静脈血がうっ血することなく心臓に戻る。とくにかむことの刺激によって脳の血管が拡張して新しい血液が補給される。咬筋の周りにからみ合っているスポンジ状の静脈から、かむことによつて汚れた血液が心臓の方にスポンジをしぼるようにして戻されるからといわれている。
かめばかむほど頭の血の流れがよくなり、働きがさわやかになる。一方、かむ動作は脳の中枢神経を仲立ちとして、運動や呼吸、ホルモンなどをつかさどる内分泌の働きと複雑に絡み合っているために、赤ちゃんの全身の発育を助けると共に、老人性痴呆の予防にも大きな効果を果す。
かめばかむほど口の周りや顎関節の周りにあるツボを刺激して、脳神経や内臓に働きかける。心が安定し情緒が豊かになると共に、表情筋を刺激して表情も豊かになる。

ガン、肥満、ボケの予防にも!少量の食べ物で満腹感

中年になってお腹の出具合を気にするようになる肥満、この肥満も、よくかんで食べる習慣を身につけることによって防げる。ゆっくりと良くかんで食べていると身体がポカポカして発汗が盛んになる。エネルギーが熱として体外に捨て去られることによって肥満にならずにすむ。味覚が刺激されるとノルアドレナリンの分泌が高まり、全身の細胞の活動が盛んになるために熱が発生する。
これが体熱産生反応だけではない。よくかむことは少量の食べ物で血液の中の血糖値を上げて、満腹感が得られる。栄養分が消化吸収されると血糖値が上がって大脳から、もう沢山であるという指令がでるが、急いで早食いをするとこの血糖値が上がる前に、もう沢山の食べ物がお腹の中に入ってしまっているということである。

唾液は無料の万能薬

毎年約20万人が亡くなり、日本人の死亡原因のトップを占めるガンだが、唾液には私達の食事に含まれる色々な発ガン性物質の毒性を消す効果があるといわれている。
唾液を混ぜる時間が長いほど毒消し効果は強く、毒性が元の1〜2割に薄まるのに約30秒、1回かむのに成人でも子供でも大体1秒かかるので、「食事は1口30回」が望まれる。
これは発ガン性物質が作り出す活性酸素を、唾液に含まれるペルオキシダーゼという酵素が消してしまうからと考えられている。唾液にはこのほか、消化を助けるアミラーゼ、骨や筋肉・血管・結合組織を丈夫にして老化を防ぐパロチン、口腔内細菌の繁殖を抑えるリゾチームなどが含まれている。

また、かめばかむほど口の中の自浄作用が促進される。食物繊維や唾液などの流れによって口の中が自然にきれいになるということであり、話をしたり笑ったりすることでも、この自浄作用は促進されるといわれている。

こう考えてくると唾液は無料の万能薬でもあり、かむ手間も惜しくはないはずである。