[かむカム09号/1995年03月]より 歯のまめ知識かむカム歯の話

どうなっているの動物たちの歯は?

横浜市立野毛山動物園を訪ねる

私たちの歯の大切さはお互いに認めるところですが、動物の歯のしくみや様子については案外わかっていません。今回はこの動物の歯に焦点をあてて取材をし、入間にみられない歯の特色をさぐってみました。

野毛山動物園を訪れて

きょうは動物の歯を調べに横浜市立野毛山動物園を訪れました。飼育技師の松岡良樹さん(32)と獣医師の竹田洋さん(39)から聞いた話をまとめてみました。
野毛山動物園には約200種、1400千頭の動物がいます。ゾウ、クマ、トラ、ヒョウ、チンパンジーから小鳥までいます。

ソウの歯は四本

獣医師の竹田さんゾウのハマ子は40代、人間なら70代になりました。皆さん方が知っているように長い鼻は一粒のピーナツをつまみあげるし、重さ1トンを越える材木を軽々と運びます。大きな耳は暑さをしのぐ重要な放熱器で、ウチワを使うようにパタパタと動かします。歯は四本。
一本が手のひら大の石の塊のような頑丈なもので、擦り減って使えなくなると交代の歯が奥から水平に出てきます。牙(きば)は上あごの門歯が発達したもので犬歯ではありません。

野生動物はむし歯がありますか

歯の話が出たのでむし歯について聞いてみました。動物園で飼われる野生動物がむし歯になるのはエサが原因です。それは甘いお菓子です。チンパンジーは皆さんに対し、オリの中から手を出してお菓子をせがむでしょう。お菓子を食べ続けると歯ぐきがはれてきたり、歯の根元が茶色になってきまゾウの歯(ボールペンと較べてください)す。放っておくとむし歯となって歯がぐらつくようになり、エサが食べられなくなります。当然、動作も鈍くなります。肉を刻んでやるようになると野生動物とはいえなくなります。その先は死が待っています。
そこで早期発見、早期治療が大事です。しかし動物たちにはそれが理解できません。人間の赤ちゃんと同じように泣き叫んで反抗レます。麻酔注射でショック死する動物がいます。チンパンジーのむし歯を治療したら信頼関係が失われ、ウンチを投げつけてきたそうです。オランウータンはマレー語で「森の人」を意味します。体型や暮らしぶりから人間に最も近い動物ですが、ツバをかけてくるそうです。
野生の動物は自然のエサを食べている限り、むし歯にはならないそうです。ゾウ、キリン、シマウマは木の葉や草を食べます。ライオン、トラ、ヒョウ、オオカミは肉食動物で、硬い骨をかじったり、けんかをして歯を折ったためにそこからむし歯になることがあります。弱肉強食の世界に生きる動物が、その貴重な武器である歯を失うことはあわれです。肩高約60センチのリカオンは草原に住む肉食動物ですが、生きているライオンを歯を欠くゆえに襲って食べてしまうそうです。

動物も歯を磨きます

人間はむし歯にならないために歯を磨きます。動物は舌で口の中をなめ、よだれを出して掃除します。ヒョウ、チーターのヤスリのうなザラザラした舌は、口の中をきれいにするのに適しています。ワニやカバには歯の隙間の食ベカスや皮膚につく寄生虫をとってくれる鳥がいます。チンパンジーはけがをすると傷口を自分の舌でなめて治します。殺菌力の強いツバの効き目だそうです。

お菓子ばかり食べていると、栄養のバランスが崩れることは人間社会と同じです。お菓子の食べ過ぎは、皆さんが多くくる日曜日に飼育係の与えるエサを残すので分かります。スイ臓をやられたり、糖尿病にもなります。しかし、ボケにはならないそうです。毎日、オリの中に寝ころんでいて、エサを探す苦労もしないで暮らす結構な身分なので、ボケても不思議はなさそうですが、警戒心が強く、神経が研ぎ澄まされているからでしょう。

動物も寿命が長くなりました動物の世界も平均寿命が長くなりました。エサと飼育方法の向上によるものでしょう。病気の治療にも各種の検査方法が進み、投薬にもシロップに入れるなどして甘いものが大好きな動物の習性に合わせていることもありましょう。

終わりにネコ科とイヌ科の歯の特徴を聞きました。ネコ科のライオン、ジャガー、クロヒョウは、鋭い裂肉歯で肉を食いちぎります。かみくだかないで丸のみするので多くの歯を必要としません。これに対し、イヌ科のオオカミは42本の歯の持ち主で肉をかみ、骨をかじります。ハイエナになるとライオンより太くて大きい歯と強いアゴで、ゾウの骨でもかじってしまいます。

帰りぎわ、水に棲(す)む巨獣カバのオリの前に立ち寄りました。巨大な牙と大きなアゴ、馬のように長いカオは大きな 臼歯を備えるための必然の道具です。それにしても何と異様な容姿でしょう。皆さんのお兄さん、お姉さんでジャングル生活を楽しんでいる人がいたら教えてやってください。「お見合いは、カバのオリの前が最適だそうよ」と。