| 民間療法『救民妙薬』 (きゅうみんみょうやく) |
| 元禄6年(1693年)水戸光圀(みとみつくに)が、藩医穂積甫庵に命じて編集した本が『救民妙薬』である。この本は、家庭用の医学書で農民や庶民のために野山の草木、動物など手に入るもの
を利用して薬を作ることを教えた。『救民妙薬』には、歯痛の薬として、次のようなものが書かれている。 ▲あかざ、昆布(こんぶ)を黒焼にし、等分に合わせ粉にしてつける。 ▲杉脂、又桧脂まるくして虫歯の穴に入れる。 ▲胡椒一粒、あつき湯にひたして上皮をとりきれにつつみふくむ。 江戸時代に庶民がおこなっていた歯痛止めの方法は、 1)虫歯の穴にいれる・・松脂、桧脂、湯の花粉末、胡椒、大豆、杏仁粉末(きょうにん)、石灰と蜜、胡 椒と麦飯 2)貼る、塗る・・あかざと昆布、千人草と塩、なすの茎、硫黄と塩、車前草と塩、巴豆(はづ)油、 ごぼうと塩、お けら、梅干し、水仙、大根おろし、ねずみや犬の糞、蛇の抜け殻(がら) 3)口に含む(痛い歯で噛む)・・さんしょうと酢、白楊皮(はくようひ)と酢、仙人草と味噌汁、黒大豆 と酒、 南天の葉、五倍子(ふしご)、ねぎとごま油、柚青葉、蜂 の巣と塩湯、よもぎの葉か葱の白 根、蜂の巣を胡麻油にひたしたもの、はこべを塩ずけにしたもの、竜脳(りゅうのう)を細末にし酢を加 えたもの
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| 民間療法『経験千方』には (けいけんせんぽう) |
| 『経験千方』は、文化14年(1817年)に発刊された家庭の医学書や救急書といえる本で、
歯痛には、次のような治療法が紹介されている。 1)なすびの香もの黒焼き細末にしあるべし、茎を黒焼きにしつけるもまたよし 2)柚(ゆず)の青葉蜂のす塩湯にせんじふくむべし 3)松の葉手一束に切塩小皿に一つ入せんじてふくむべし 4)松の節せんじてふくむもよし 5)杏仁(きょうにん)黒焼きにしきみにつつみくはへてよし 6)だいこんのしぼり汁いたまざる耳にそそぐべし 7)やまうめのかわせんじてふくむべし 8)ふしのこきれに包みてふくむべし 現代の歯科知識では、あまり歯痛どめに効果がなさそうである。
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| 歯痛の売薬 |
| 室町時代には、寺や商人が薬を製造販売し、庶民の間で歓迎された。江戸時代の歯痛や歯周病の売薬としては、次のようなものがある。 1)口中御薬固齦散(京屋伝蔵)・・・あけ歯、うき歯、うみ血、血いづるはぐきはれ 2)齲の薬(うのくすり:京屋伝蔵) 3)御ふくみ薬(万屋庄太衛門)・・・たちまちに痛みをしりぞけ平癒することすみやか也 4)むし歯ー付薬珊瑚砕(さんごさい:京屋伝蔵)・・・少しいたみ出したる時に用いれば一付にていたみを治す 5)神仙解毒万病丹(しんせんげどくまんびょうたん:木下道正庵)・・・齲歯(うし)には歯のかけた穴へ、その大きさにくだきいれおくべし 6)紫金錠(しきんじょう:鳩居堂)・・・むしくい歯に、いたむはにかみ合せてよし 7)虫歯之薬(下総、渡辺木左衛門)・・・むしばの一切の妙薬 これらの薬の成分はわからないが、幕末には鎮痛作用のあるケレオソート(クレオソー トのこと)が輸入され、売薬として販売された。
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