知ってほしい「たばこ」の害

はじめに

 喫煙が多くの病気のリスクファクターであることは、周知のことと思われます。わが国の4大死因である癌・心疾患・肺炎・脳血管疾患だけでなく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や歯周病にも深いかかわりがあると言われています。喫煙する人が、自らの健康を損ねるのは自己責任ともいえます。けれども、喫煙者には、煙草を吸わない人が喫煙者の副流煙や呼気に含まれる有害物質に曝される受動喫煙に対しても、責任を意識してもらわなくてはなりません。

たばこを吸わない人への配慮


 ベランダで喫煙しても、すぐに室内に入れば呼気から大量の有害物質がまき散らされ、煙草を吸わない家族に受動喫煙の被害を与えてしまうのです。肺癌・虚血性心疾患・脳卒中・乳幼児突然死症候群などにより、受動喫煙が原因の死亡者は年間一万五千人に達するといわれています。遅まきながら受動喫煙防止の法律も制定されましたが、年間で二兆一千億円の税収を減らしたくないためか、中身は緩い規制にしかなっていません。

歯科とのかかわり

 歯科においても、喫煙者の歯肉は煙草の煙で燻されて、どす黒く変色してきます。肺の中を覗き見ることはできませんが、歯肉の状態を見れば、おのずと肺の状態も推察されます。さらに煙草は血流を阻害するため、歯周病を治りにくくして重症化するまで気づかなくさせます。歯を失わないことが健康寿命の延伸に寄与するといわれています。歯を失う最大の原因は歯周病です。歯周病を治療したければ、まず第一に禁煙をしていただかなくてはなりません。
喫煙もギャンブルと同じ一種の依存症です。他人に「煙草をやめなさい」と言われたら、逆に「意地でもやめない」と思ってしまうものです。自らの強い意思で、誰にも宣言せずに、密かに禁煙することをお勧めします。

参考

・口からみえるたばこの害 喫煙と歯肉(医歯薬出版株式会社)松岡 晃 著

神奈川県歯科医師会・逗葉歯科医師会会員
松岡歯科医院 松岡 晃

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

もくじ