「舌が痛い」と感じたら・・・

食事や話をするときなど、24時間いつでも私たちを支えてくれる、舌。
その舌に痛みを感じるときはありませんか?
舌の痛みは、放っておくと大きな病気につながることもあります。
また最近は、原因がわからないのに舌の痛みが続く「舌痛症」の患者さんも増えています。ここでは、舌の痛みにはどんなものがあるのか、どうしたらいいのか、お話ししていきましょう。

① 口内炎

舌の痛みの中で、もっとも多いのが「口内炎」です。口内炎は誰しもが一度は経験したことがあるでしょう。円形で小さく白っぽい潰瘍がひとつあるだけで、話すのも食べるのも一苦労しますよね。口内炎は舌だけでなく、頬やくちびるの裏など口の中の粘膜どこにでも起こります。ストレスや疲労、睡眠不足がたまっていたりするとできやすいものですが、多くは数日~2週間ほどで自然に治ります。ひどい場合にはステロイド軟こうを処方してもらえば、それを塗ることで治ります。

② 舌癌

ところが、口内炎と思っていたものが、2週間以上経っても治らないケースがあります。実はこの中には、口内炎ではなく舌の癌、「舌癌」だった、ということもあるのです。特に、舌の縁あたりに、硬さを伴った潰瘍ができて、それがなかなか治らないときは、舌癌の可能性があります。早めに口腔外科を受診しましょう。

③ 舌が赤く痛くなる

舌の痛みの中には、舌の赤みをともなうものがあります。中年以降の女性に多く、口の中が乾燥したり、やけどの後のようなヒリヒリとした痛みやピリピリする痛みともなうこともあります。こうした赤みや痛みのある症状のケースには、さまざまな病気が考えられます。
まず、鉄分が足りずに貧血になる「鉄欠乏性貧血」でこうした症状が起こります。鉄欠乏性貧血の場合は、同時に口角のびらんや、爪が反り返る匙状爪といった症状が見られることもあり、それらが一緒にあるような場合は鉄欠乏性貧血を疑いましょう。
また、ビタミンB12や葉酸が足りなくなることで生じる「ハンター舌炎」でも似たような症状をともなうことがあります。
これらのケースでは、内科の受診をしたほうがよいでしょう。
さらに、「口腔カンジダ症」でも舌が赤くなり痛みを生じるケースが多く見られます。これはカンジダ菌が原因で起こる炎症です。カンジダ菌は、健康な人でも多くが口の中に持っている口腔常在菌で、ふだんは免疫の力で抑えられていますが、疲労や体調不良などで免疫力が落ちると菌の繁殖を抑えることができずに、炎症を起こしてしまいます。高齢者や、口の中の清掃がうまくできていないとかかりやすくなります。灼熱感とともに、触れるだけで痛みやあり刺激痛もあります。
カンジダ症の治療には、抗真菌薬を使います。うがい薬や塗り薬、あるいは内服薬を使うことで対処します。また、安静にしてしっかりと体力を回復し、口の中を清潔に保つようにすれば治っていきます。
なお、口内炎の治療で使うステロイド軟こうは決して使わないようにしましょう。
カンジダ症には、赤みが生じる場合以外にも、白い苔状のものが舌や口の中の粘膜に広がり痛くなるケースもあります。どちらも適切な治療を受けるようにしましょう。

④ その他の病気

舌や口の中の粘膜が白みがかったレース状になり、ピリピリする痛みをともなう場合があります。香辛料に強い刺激を感じ、カレーやキムチが辛くて食べられない、といったケースでは、「口腔扁平苔癬」の疑いがあります。40歳以上の女性に発症しやすいと言われます。決まった治療法はなく、症状に合わせて対処療法をしていく必要があります。口腔外科でしっかり診療してもらうようにしましょう。
舌の痛みを生じさせる原因のひとつに、口の中の乾燥があります。この「口腔乾燥症」による舌の痛みは、さまざまなケースを想定する必要があります。
糖尿病やシェーグレン症候群のように口が渇きやすく、唾液の分泌の低下をもたらす病気が舌の痛みの原因になることもあります。また、加齢や薬の内服によっても唾液の量が減って口の中が乾燥してしまい、舌に痛みを感じることもあります。また、唾液の量が減ると口腔カンジダ症になりやすいことも知られていて、そのことで舌の痛みが生じている可能性もあります。口腔乾燥症は、鼻が詰まっていたりして口呼吸になっていることで生じる場合もあります。どのケースでも、おおもとの治療が必要になってきます。

⑤ 舌痛症

最近増えているのが、舌には異常が無いにもかかわらずなぜか痛みを感じる、いわゆる「舌痛症」です。
舌痛症の症状がみられるのは、中年以降の女性に多く、舌や口全体に痛みや違和感をともないます。灼熱感(やけどしたような痛み)や「ヒリヒリ」「ピリピリ」するような痛みのことが多いようです。口腔灼熱症候群と呼ばれることもあります。
口の中が乾燥するような感じやや味覚障害を伴うこともあります。また痛みにはon-offがあり、睡眠している時には症状がなく、起床してから徐々に痛みが増していき、しかし会話や食事の時には治まるという特徴が多く見られます。
舌痛症は、明らかな原因がわかっていません。ふだんのストレスや不安など、心理的な要因や精神的な負荷によって起きているのではないかとも考えられていて、そうしたものを心因性舌痛症と呼ぶこともあります。
例えば、何気なく口の中を見てみたら『できもの』のようなものがある、本当は正常な舌の組織を「もしかしたら舌癌ではないか」と思い不安が生じる、その不安は徐々に募り、しだいに痛みになっていく、しかも痛みはなかなか消えない、舌を調べることが毎日の習慣となり、さらに不安が深まり痛みが消えない。そうしていつのまにか心因性の舌痛症になってしまう、というようなケースが考えられます。
こういったケースでは、『癌ではない』と分かっただけで痛みが消失することもあります。ただ一般的には、治療は長期化し難渋することが多いものです。ステロイド軟膏や含嗽薬で一時的に治療効果が認められることもありますが、現在、最も有効とされているのが、抗うつ薬を中心とした薬物療法です。精神科や心療内科など専門医の診断を仰ぐのがよいでしょう。

終わりに

舌の痛みは様々なものがあり、その原因もいろいろです。
いずれの症状でも、まずはかかりつけの歯科医や、口腔外科でしっかりと診察してもらうことが大切です。ぜひ適切な治療をするようにしてください。

神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員 松崎崇

参考文献
氷見徹夫.舌のすべて 舌痛症と口腔・舌乾燥症(解説/特集). ENTONI.2011, 134, 16-22
勝岡憲夫.口腔粘膜・舌病変の診療 口腔粘膜・舌病変の診方. Derma. 2011, 186, 1-7
高戸毅 監修. 医師・歯科医師のための口腔診療必携 困ったときのマニュアル・ヒント集202. 第1版, 東京,2010, 263

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