唾液は万能薬!?

唾液は万能薬!?

唾液が出やすくなる習慣をつくる

唾液はなんとなく汚いものと思われがちですが、実は私たちの健康にとても重要なはたらきをしています。
常に分泌されている「安静時唾液」は、口腔内をうるおして粘膜を守り、細菌の増殖を抑えてくれます。
また、食事のときなどに分泌される「刺激唾液」は、食べものと混ざり合うことで飲み込みやすくするなどのはたらきをします。
味を感じながらおいしく飲食できるのも、唾液のはたらきがあるからです。
今回は、口腔環境を整えて、さまざまな健康上のメリットをもたらす唾液の効用と唾液が出やすくなる習慣をつくるコツについてお話しします。

唾液のはたらきと健康上のメリット

唾液は口腔内で重要な役割を果たしており、適切な唾液の分泌量と質を維持することは口腔環境の健康維持や一般的な健康にも重要です。

1.口腔内のうるおいを保つ 唾液は口腔内を湿潤に保つ役割を果たし、乾燥を防ぎます。乾燥した口腔内は「ドライマウス」とも言われ、細菌の増殖を促進し、口臭や口内炎のリスクを高めます。
2.食物の咀嚼(そしゃく)と嚥下(えんげ)の補助 唾液は食物を湿らせ、咀嚼(食べものを噛んで唾液とまぜ合わせること)や嚥下(飲み込むこと)を助けます。唾液には消化酵素であるアミラーゼが含まれており、食物の消化と栄養の吸収に重要な役割を果たします。
3.口臭の予防 唾液は口腔内の細菌の増殖を抑制し、口臭の予防に役立ちます。抗菌成分や口腔内の自己洗浄効果により、口臭を軽減することができます。
4.歯の健康維持 唾液は歯の再石灰化を促進し、むし歯の予防や歯の健康維持に役立ちます。唾液に含まれるミネラルやカルシウムが歯のエナメル質を強化し、酸性度を調節することにより脱灰を防ぎます。
5.免疫機能のサポート 唾液には免疫関連物質が含まれており、口腔内の細菌やウイルスに対する防御機能を果たします。このため、口腔内の感染症のリスクを低減します。

口腔内が唾液でうるおう生活習慣を

唾液は、このように口腔内だけでなく、心身の健康維持・向上に重要な役割を果たしています。では、唾液の分泌をうながすためには、どのようなことを心がければよいでしょうか。
唾液は、自律神経の1つである副交感神経が刺激されることにより分泌されます。
したがって、強いストレスなどにより自律神経のバランスが乱れると、唾液の分泌量は減る傾向があります。たとえば極度の緊張や不安を感じたとき、口のなかが乾いたという経験をもつ人も多いことでしょう。
唾液の分泌量や質を維持するためには、適切な水分摂取、口腔衛生の維持、食物をよく噛む習慣、酸味のある食品やキシリトールの摂取などが推奨されています。定期的な歯科検診や適切な口腔ケアの実施も重要です。
ドライマウスの方々のためには、唾液の分泌にかかわる顎下腺、耳下腺、舌下線をマッサージする方法も紹介されています(図)。
こうした習慣を取り入れることで唾液の分泌が促進され、口腔環境が整えられ、ひいては心身の健康につながるというメリットが期待されます。
日々、心身ともに健康で楽しく生きていくため、口腔内が唾液でうるおう生活習慣を身につけてはいかがでしょう

図 唾液の分泌をうながすマッサージ

 

■参考文献
赤峰順一, 村松隆夫「唾液の生理学的機能」医学のあゆみ. 2015; 256(4): 221-225.
梶原利昭, 木戸哲朗「口腔細菌学」医学書院. 2009.
岡田正彦「歯周病対策で生活習慣病を防ぐ!」大洋図書2023.
日本歯科医師会「口腔機能と唾液の働きについて」日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/jda_wa/02_kangae/fukushi/02_gaiyo/01_kagaku/kaisetsu/012.html

神奈川県歯科医師会・厚木歯科医師会会員 横田歯科医院 横田 剛

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