高齢者に起こる摂食機能障害とその対応について

執筆者
神奈川県歯科医師会・大和綾瀬歯科医師会会員 三國 文

高齢になると、老化によって運動機能が低下します。早く走れなくなるのと同じように噛んだり飲み込んだりするパワーも低下します。また、認知症によって認知機能が低下したり、運動や感覚が低下したりすると、上手に食べることができなくなります。こうなると、栄養摂取不足はもちろん、窒息事故や誤嚥性肺炎など、高齢者の命に関わる危険性も出てくる為注意が必要です。
老化や認知症によって噛んだり飲んだりするパワーの低下が見られた場合、食事の工夫も大切なことの1つです。
噛んだり飲み込んだりするパワーに合わせて適切な料理を提供しましょう。料理が食べやすくなると、栄養状態が改善したり、窒息事故や誤嚥を防ぐことになったりします。

 

噛みやすくなる工夫を挙げます。

・柔らかくなるまで食材を加熱する

・柔らかい食材を選ぶ

・食べやすいサイズに切ったりする

・義歯を使用している人は、定期的に歯科検診を受けて義歯の調整を行なってもらう

自分のお口にあった義歯で食事をとりましょう

 

食べる機能を高める為には口腔機能向上トレーニングも必要です。

咀嚼障害(上手に噛めない)、嚥下障害(飲み込めない)の人は、お口の体操で口の機能向上を図りましょう。

食べる機能を高めるために、お口のトレーニングを毎日の生活に取り入れてみることが大切です。お口や頬などを動かすことで、唾液がよく出るようになり、飲み込みやすく食べやすくなるので、誤嚥予防にもなります。

 

やってみよう!嚥下体操

ある程度からだに負担をかけないと機能訓練にはなりませんが、ハリキリすぎて、肩や首を痛めてしまっては本末転倒です。「無理や痛みのない範囲で」を心がけて、周囲の人や物との感覚を十分に考慮しましょう。

  1. 姿勢
    まずは、姿勢を整えて座り、全身の筋肉バランスを整えます。
  2.  深呼吸
    鼻から吸って、お口から吐きます。長く息を吐くようにしましょう。
    嚥下体操を始める前に、気持ちや緊張した筋肉をリラックスさせます。
  3.  首の体操
    嚥下に関係する筋肉は、首に多く集中しています。
    筋肉をゆっくり動かして筋肉をほぐすことで、食べる準備を始めます。
  4.  肩の体操
    息を吸いながら肩を引き上げて、スッと力を抜くように息を吐きながら肩を下げます。
  5.  口の体操
    お口の周りの筋肉をほぐし、動かすためのトレーニングです。大げさにお口を動かしましょう。
  6.  頬の体操
    お口の中に空気をため、ほほを内側から膨らませる筋肉のトレーニングです。しっかり噛むために、また、食べこぼし防止や、鼻へ食べ物が流れ込むのを防ぎます。
  7.  舌の体操
    食べること、そして発音をするために欠かせない舌。咀嚼時、嚥下時の舌の動きを保つことができます。
  8.  発音練習
    「パ」「タ」「カ」「ラ」と発音することで、唇や舌を動かします。唇、舌の動きを目的別にトレーニングします。
  9.  咳ばらい
    誤嚥した際に、むせるためのトレーニングです。
    やりすぎてしまうと喉を痛めることもあるので2~3回程度でかまいません。

 

 

参考文献
図解 介護のための口腔ケア 菊谷 武
絵で見てわかる 認知症「食事の困った!」に答えます 菊谷 武
はじめてみよう!やってみよう!口腔ケア https://www.kokucare.jp

執筆者情報
三國 文
神奈川県歯科医師会・大和綾瀬歯科医師会会員
三國歯科医院

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