八重歯は治療すべきか、そのままでよいのか!?

執筆者
神奈川県歯科医師会・鎌倉市歯科医師会 原 宣道

昭和の時代、人気を博したアイドル歌手のなかに八重歯の方が数多くいらしたことを記憶されている皆さんも、おられるのではないかと思います。

当時、こうしたアイドル歌手の皆さんが「八重歯がかわいい○○ちゃん」などといわれていたことが示すように、八重歯はチャームポイントの1つととらえられていました。

かつて八重歯が魅力的だったアイドル歌手のなかには、いまなお現役で活躍されている方々もたくさんおられますが、テレビなどで拝見すると、矯正治療を受けられたのか、どなたもキレイに整った歯ならびになっていることに気づきます。

はたして八重歯は治療すべきなのか、そのままでよいのか、皆さんはどうお考えになりますか?

 

八重歯ができる原因

いわゆる「八重歯」とは、上あごの犬歯という先のとがった歯が、歯ぐきの上の方から外側へ向かって生えている状態を指す俗称で、咬合不正(噛み合わせが悪いこと)である「叢生(そうせい)」の一種です。

原因は、小学校の中~高学年で乳歯から永久歯へ生えかわるとき、歯ならびやあごの骨が形成される過程で犬歯が生えるスペースが不足することによるものと考えられます。

つまり、犬歯は永久歯のなかではほかの歯より遅いタイミングで生えかわるため、歯ならびからはずれ、上下が噛み合っていない状態になりやすいというわけです。

本来、犬歯は歯根がどの歯よりも長くて太く、とても頑丈なのですが、八重歯の場合、歯ブラシなどのケアがうまくできず、むし歯や歯周病になりやすいという弱点があります。

 

八重歯を治療する理由

八重歯であることの重大な弊害は、それにも増して噛み合わせの力が不調和となることです。

ご存じの通り、ヒトのあごは上下に開閉するだけでなく左右にも動くという、いわば三次元的な動きで食物を咀嚼(そしゃく)します。

試しに、奥歯を噛んだ状態から下あごを左右に動かしてみてください。そのとき、上下の犬歯同士が接触しながら、奥歯同士は接触せずに開くのがわかりますか。

こうした動きができる方は、噛み合わせが「犬歯誘導」と呼ばれる良好な状態になっていると考えられます。犬歯誘導とは、犬歯が「軸足」となって奥歯に過度な横方向の力がかからないよう、ストッパーの役割を機能している状態を指します。

八重歯の場合、こうした機能が働かず、ほかの歯への負荷が強くなって加齢とともに破損の原因となることもあります。

犬歯誘導がしっかり機能することで、前歯や奥歯は噛み合わせの負担が軽減され、結果的にすべての歯を長持ちさせることにつながります。

 

もはや「かわいい」とはいえない?

世界的にみると、とくに欧米圏では八重歯は「ドラキュラのようだ」と、忌み嫌われる傾向があります。令和の現在、日本でも歌手やタレント、俳優の皆さんが八重歯であることは珍しくなりました。

1988年に日本人の歯科医師が発表した八重歯に関する論文では、なぜ日本だけに「八重歯がかわいい」という独特の価値観、美意識が存在する理由について、詳しく考察されています。この論文では、「日本文化の幼児性が潜んでいる」「未完成の美としての魅力」と結論づけられていました。

それから35年以上が経過し、その間、グローバル化が進展する過程で日本人の価値観、美意識は変容しました。

私自身は、もはや八重歯は必ずしも「kawaii」日本文化ではなくなってきたように感じています。

 

原歯科医院院長 鎌倉市歯科医師会 原 宣道

執筆者情報
原 宣道
神奈川県歯科医師会・鎌倉市歯科医師会
http://www.haradental.jp/

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