なぜ歯周病になるの?その症状は?
- 執筆者
- 神奈川県歯科医師会・相模原市歯科医師会会員 江田 昌弘
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2025/05/19
- 歯とお口の基礎知識
コマーシャルやドラッグストアでは歯周病の予防のための歯ブラシや歯磨き粉含嗽剤など様々なものが宣伝されています。歯周病に特化した商品ではだいたい「歯周病原菌を倒す」というようなフレーズが書いてあります。そうです、歯周病は細菌により引き起こされる病気なのです。今回はその辺をわかりやすく解説したいと思います。食事をすると歯の表面にネバネバしたものが付着します。こ
れがプラークといってむし歯にとっても歯周病にとっても諸悪の根源といわれるものです。なぜならこのプラークの中には数えきれないほどの種類の細菌がいるからです。プラークが歯の表面につくといろいろな種類の細菌が様々な作用を起こし、むし歯を作ります。また、歯と歯肉の間の歯周ポケットに入り込むと歯周病を引き起こします。
歯周病を引き起こすメカニズムは?
プラーク中の細菌は歯周ポケットに攻撃を仕掛けてきます。外から見える歯肉表面には角化というバリアーのようなものがあり、ここからでは細菌は攻め込めません。ポケット内には角化というバリアーがないのです。ポケット内に入り込んだプラークは、細菌も生物なので、生き延びようとし、バイオフィルムというバリアーを張ります。そして時間をかけてゆっくりと固くなり歯の表面に強固に付着します。これを歯石といいます。歯石になると歯ブラシでは除去できません。歯ブラシの目的はついたばかりのプラークを除去することなのです。歯に対して45度に歯ブラシをたててみがくのは、ポケット付近のプラークを除去するためです。話がそれてしまいましたが、ポケット内に侵入した細菌は、最初は酸素を必要とする細菌が多いのですが、時間と主にその種類も変化して、酸素がなくても生きていける細菌や酸素があると生きていけない細菌に変化していきます。なんとなく酸素がなくても生きていける細菌って強くて悪そうですよね?より悪い細菌に変化したものを歯周病原菌といいます。「レッドコンプレックス」といい3種類の代表選手がいます。これらの歯周病原菌は毒のようなものを出します。その毒は角化というバリアーのない歯周から歯肉を攻撃し歯肉に攻撃します。
症状1:歯肉炎(炎症が歯肉に限局)
毒で攻撃されると歯肉は炎症を起こします。そうすると歯肉がはれてきます。具体的には歯と歯の間の歯肉がきれいな三角形(この状態が健康)ではなく、ブヨブヨした丸い感じになります。また、歯を磨くと歯ブラシが歯肉に当たった刺激だけで出血するようになります。痛くもないしよく見ないと歯肉の形もわからないので、この段階は見逃されがちです。もしこの段階で歯医者に来てくれればすごく簡単に治ります。ただ、長い時間をかけて作られた症状なので、1回では無理です。痛いむし歯が1日で痛みが治まった、というのとは違います。
2、軽度歯周炎:歯周炎(ポケットが深くなり、骨も溶けてしまう)
この「ブラッシング時の出血」を見逃すと今度は歯を支える骨が溶けていきます。これも痛みを伴わず、ゆっくり(何十年単位です)と進行します。それと同時に歯と骨をくっつけている部分が破壊され、ポケットが深くなり、より深いところにプラークと共に細菌が入り込みバイオフィルムや歯石を作り上げます。この骨の吸収と深いポケットが歯周病の特徴です。この時期になると炎症が強く、歯肉の色も赤黒くなり、ポケットから血や膿が出たり、数本の歯が揺れてきたりと患者さんも「おかしいな」と気付くようになります。このあたりであれば、適切な治療を受診することで歯周病になる前と遜色ない程度によく噛めるように治せることが多いです。
3,重度歯周炎
歯周病はこの負の連鎖を痛みを宿主(患者)に与えずにゆっくりと進めます。2の段階を気付かずにいると多くの歯が揺れてきて、痛くて硬いものが噛めない、とか朝起きたら歯肉から出血しているなどの症状が出てきます。ここまでくると抜歯などの治療が必要となってきます。場合によっては多くの歯を抜いて入れ歯にせざるを得ないこともあります。
なんとなく感じてもらえたと思いますが、プラークをうまく管理できれば歯周病にはなりにくい。ということです。ただ「じゃあ、歯を磨くよ」というわけにはいきません。その患者さんにあった磨き方、道具などがあります。歯医者でみがき方を教わったとしても100%自分でみがくのは難しいです。定期的に口腔内を診査し、必要なメインテナンスを行ってくれる歯医者(こういうところを「かかりつけ歯科医」といいます)に通って、お口の健口を保つようにしてください。
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江田 昌弘神奈川県歯科医師会・相模原市歯科医師会会員
えだ歯科医院