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    ~あなどれない悪影響と上手にやめさせるコツ~

子どもの指しゃぶり、放っておいていいの!?
~あなどれない悪影響と上手にやめさせるコツ~

 指しゃぶりをしながらスヤスヤと眠っているお子さんの姿は平和そのもの、「成長すればいずれなおるだろう」と放置している保護者の皆さんも多いことでしょう。
 しかし、長年、指しゃぶりを続けていると歯ならびが悪くなり、噛み合わせに不具合が生じて食べものを噛みにくくなくなったり、発音しにくくなったりすることもあるのです。
 今回は、軽視されがちなお子さんの指しゃぶりによる意外な悪影響と上手にやめさせるコツについてお話します。

歯並びが悪くなって噛みきれなくなったり発音が不明瞭になったり…

 妊娠したお母さんのおなかを超音波検査などでみると、赤ちゃんが指しゃぶりをしている様子が観察されることがあります。
 こんなふうに赤ちゃんがおなかのなかにいるときからしている指しゃぶりも、出生後、成長するにつれ自然にしなくなっていきます。指しゃぶりにふけっているお子さんは静かでうっとりした表情をしており、保護者の皆さんが「やめさせるのもかわいそう」「そのうちなおるだろう」と思われるのもムリはありません。
 しかし、お子さんが2〜3歳を過ぎても指に「吸いダコ」ができるほどしつこく指しゃぶりを続けている場合は、気長に優しさをもってやめるようしつけをしていく必要があります。

 指しゃぶりをしているときのお子さんは、実は保護者の皆さんがお口から指を引き抜こうとしても、なかなか抜けにくいほど強い力で指を吸っているのです。
 こんなふうに長時間、長期間にわたって強く指を吸い続けていると、歯やあご、顔のかたちに大きな影響が出てしまうことがあります。

 お子さんが指しゃぶりをしているとき、指をくわえる力によって上の前歯は上前方に押し出され、下の前歯は後下方へと押さえつけられます(図1)。
 その結果、出っ歯になったり、奥歯を噛み合わせたときに前歯がかみ合わない開咬(かいこう)という状態になったりしやすくなるのです。
 さらに、指を強く吸引していると奥歯を外側から内側に押す力がはたらき、歯ならびの横幅が狭くなる狭窄歯列弓(きょうさくしれつきゅう)を引き起こすなど、さまざまな問題を生じます。

 乳児の間だけ指しゃぶりをしているなら大きな問題はないのですが、3歳以降も続くようですと、このようなかみ合わせが悪くなる不正咬合(ふせいこうごう)を起こす可能性が大きくなります。

図1

指しゃぶりが前歯におよぼす影響は意外に強く、上の前歯を前上方に、
下の前歯を後下方に圧迫して歯ならびを悪くする原因に

大人になってからも悪影響、指しゃぶりをあなどるべからず

 幼児期に指しゃぶりを続けることによって、大人になってからどんな影響が出るでしょうか。百聞は一見にしかず、実際に私が拝見した患者さんの写真をご紹介しましょう(図2)。
 この患者さんは18歳女性で、小学生低学年までしつこく指しゃぶりをしていたそうです。
 ご覧のように出っ歯と上下の前歯が噛み合わない開咬がみられ、食べものを噛みきることができない状態になっています。
 指しゃぶりをやめても、できてしまった上下の前歯の空間に舌を入れるという別の悪習慣(舌癖)がついてしまい、いっこうに開咬がなおらないままでした。
 唇が閉じにくいため鼻呼吸の習慣がつかず口で呼吸するようになり、会話をするときも特にさ行やた行などの発音がうまくできず、滑舌(かつぜつ)が悪いことに悩んでもおられました。
 指しゃぶりとは直接の関係はないのですが、転倒したときに歯をぶつけ、歯の神経が断裂したことにより黒ずんだ変色歯も見られます。

 幼児期の指しゃぶりは大人になってもさまざまな問題を引きずることになりかねませんので、けっしてあなどることはできません。
 お子さんの歯ならびに心配な様子があれば、矯正歯科医や小児歯科医にご相談ください。

図2 18歳女性。小学校に上がるまで指を強く吸引し続けた結果、上の前歯が前に突き出して上下の前歯をかみ合わせることができなくなっています。このため食物がよくかみ切れず、滑舌(かつぜつ)も悪くなっていました。

叱りつけるような態度でムリにやめさせるのは、かえって逆効果

 その昔、子どもの指しゃぶりをなおすため、指にカラシを塗ったり、「指をくわえて寝ているとオバケが出るよ」といって怖がらせたりしたこともありますが、あまり勧められた方法とはいえません。
 お子さんが2~3歳を過ぎてもしつこく指しゃぶりを続けている場合、ムリにやめさせるのではなく、優しくいいきかせて気長にやめる方向にもっていくとよいでしょう。

1)「指しゃぶりしちゃダメっていったでしょ!」などと叱りつけるような態度で接すると、
  うっとりと指をくわえていた子どもが心理的に抑圧されることになり、あまりよくありません。

2)お子さんに添い寝をし、手を握ってあげながらトントンしてあげるなど、優しい気持ちをもって接してあげましょう。

3)誕生日やクラス替えなど何かの機会をチャンスとし、「今日からがんばって指しゃぶりをやめようね」と目標を決め、その気にさせましょう。

2~3歳を過ぎても指しゃぶりを続けているお子さんをおもちの保護者の皆さんは、お子さんが大人になってから噛み合わせによる不具合に悩まされることのないよう、いろいろチャレンジしてみましょう。

神奈川県歯科医師会 会員 
 神奈川県厚木市 あさひ矯正歯科 隅田 能英

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