お口の中をケアして、認知症を予防しよう!


増加の一途をたどる、認知症。その進行を予防するのに、お口の中のケアがとても大事だって、ご存知でしたか?
いったいなぜ、口腔ケアをすることが認知症を防ぐことにつながるのか、お話しします。

私たちにとても身近な「認知症」、歯科との関係って?

高齢化社会をひた走る日本。皆さんの周りにも、認知症になった、という方がいらっしゃるのではないでしょうか。
いま日本における認知症の患者数は約462 万人と言われています。また、その前段階である「軽度認知障害」(MCI:Mild Cognitive Impairment)の人は約900 万人いるとも言われます。いまや高齢者では、4人に1人が認知症または軽度認知障害であるとされています。それほどまでに、認知症はとても身近な存在なのです。今後もさらに増加の一途をたどっていくのは間違いないでしょう。
医療がこれほどまで発達した現代ですが、しかし認知症の根本的な治療方法や、根治できる治療薬はまだありません。大切なのは、症状を悪い状態にしないようにしていくことです。
実は、歯科医療は認知症の予防や進行を遅らせるのにとても有用なのです。いったいどういうことなのでしょうか?

そもそも認知症って?

認知症とは、なんらかの原因によって脳細胞が損傷を受け、その働きが悪くなることで記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障がおきる状態のことをいいます。認知症の5~7割を占めると言われるのが「アルツハイマー型認知症」で、脳の中に異常たんぱく質が蓄積するなどして神経細胞が死んでいくことで発症します。また神経細胞の中にレビー小体という小さな塊が蓄積していき発症する「レビー小体認知症」、脳梗塞や脳出血などで生じた脳血管障害によって発症する「脳血管性認知症」などが知られています。
認知症という言葉はよく聞くことも多いと思いますが、認知症の一歩手前の状態のことをさす「軽度認知障害(MCI)」はまだあまり知られていないかもしれません。このMCIの段階で見つけ、認知症の発症を遅らせることが重要になります。このとき、口腔ケアがとても大事になるのです。

(出典:認知症ONLINE)


歯が20本以上残っている人は、認知症になりにくい!

ここで、とても興味深い研究データをお教えしましょう。
愛知県の65歳以上の健常者4千人以上を4年間にわたり調べたところ、歯がほとんどないのに入れ歯を使用していない人、あまり噛めない人,またかかりつけ歯科医院のない人では,その後、認知症が発症するリスクが高くなることがわかったというのです。特に,歯がほとんどないのに入れ歯を使用していない人は,20 本以上歯が残っている人に比べ、なんと1.9倍も認知症発症のリスクが高かったというのです。

また、私たちの研究グループの調査でも、15の歯科医療施設で65歳以上の高齢者200名以上について調べたところ、認知症や軽度認知障害の人の歯の数の平均は17.5本だったのに対し、健常者な人の歯の数は20.7本と、差があることがわかりました。

〇現在の歯の数と認知機能との関係

(左:認知機能正常   右:軽度認知障害ないしは認知症の疑い)

総じて、歯が健康な人ほど、認知症になりにくい、ということが言えるでしょう。日頃から食事をきちんと摂り、しっかりと咀嚼して、食べ物を味わい、美味しいと感じられるような生活を送ることはとても大切です。口腔ケアをきちんと行い、歯を健康に保つことは、認知症の予防や進行を遅らせることにつながるのです。

日頃からの口腔ケアが大切!!

私たちは、歯科医院に通院している65歳以上の人を対象に認知機能について検査を行い調べてみました。すると、その約63.1%もの人が軽度認知障害もしくは認知症の疑いあり、という結果となりました。
認知症になると、症状の進行に伴い歯科医院への通院が困難になってきます。訪問診療の場合でも、診察や治療そのものがどうしても困難になります。
ですので、認知症になる前、通院可能なうちに、早めにお口の機能を修復し、口腔ケアを維持していくことがとても大切なのです。歯が欠損しているところには、人工の歯(入れ歯、インプラント、ブリッジなど)を装着し、きちんとかみ合わせができるようにしましょう。そうすることが認知症の予防にもなるのです。

また、認知症が進むと、どうしても口腔ケアがおろそかになり、不衛生な状態になりやすくなります。そのため、歯周病や誤嚥(ごえん)性肺炎などの感染症も起きやすく、全身の疾患につながりかねません。ですので、歯科医院に通院しているうちから、口の中の清掃方法などを歯科衛生士さんといっしょに管理することが大切です。
通院できなくなっても、介助者による、歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助的清掃用具を使った口腔ケアが大事です。歯科衛生士さんの指導を受けて行うのが効果的です。認知症の方に対して歯科がかかわり、食を支えることが、介護の現場ではとても重要なのです。

最後に

高齢者の方々の口腔ケアをしっかりと管理することは、軽度認知障害から認知症への進行を遅らせ、認知症を予防することにつながります。また、日ごろからの歯科治療の中で歯科医師が認知症と疑わしい高齢者を専門医などへつなぎ、連携して対応していくことも大切です。神奈川県歯科医師会では、国の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)をふまえた、認知症への対応についての研修を会員に対して行っており、認知症の人々の生活を支えることに努力しています。

神奈川県歯科医師会・相模原市歯科医師会会員 奥森直人

参考資料

・公益社団法人日本歯科先端技術研究所 「歯科と認知機能に関する研究総括報告書」
・認知症オンライン https://ninchisho-online.com/dementia/symptom/alzheimer/
・平成22年 厚生労働科学研究:神奈川歯科大学
    

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