マウスピース型矯正装置のメリットとデメリットについて

メリットとデメリット

歯並びを整える歯列矯正治療は、一般に1つひとつの歯にプラケットと呼ばれる装置をつけ、ワイヤーでプラケット同士をつなげるように固定する「マルチプラケット装置」が用いられています(図1)。
最近では、プラケットやワイヤーを使わず、患者さんご自身が透明の樹脂でできたマウスピースを歯に装着し、歯並びを整える「マウスピース型矯正」が登場し、注目されています(図2)。
今回は、歯列矯正治療を担う歯科医師の立場から、マウスピース型矯正のメリットとデメリットを、現在、もっとも普及し、治療効果が優れていると考えられるマルチブラケット装置と比較してみることにしましょう。

マウスピース型矯正にはメリットだけでなくデメリットも

マウスピース型矯正には、マルチプラケット装置と比較して次のようなメリットがあります。

1. 見た目が目立たない
2. 金属アレルギーなどの理由でマルチブラケット装置が使えない患者さんにも使用できる
3. 患者さんご自身で取り外すことができ、歯みがきや口腔内の清掃がしやすい

マウスピース型矯正を希望される患者さんが増えているのも、このようなメリットに魅力を感じておられるからでしょう。
一方、マウスピース型矯正にはデメリットがあることも認識しておく必要があります。

1. 治療が患者さんの自己管理に委ねられているため、予期しない結果が生じることがある
2. 歯を動かせる範囲に限界があるため、患者さんのご希望通りに治せない場合がある

このようにマウスピース型矯正で治療がうまくいかなかった場合、マルチブラケット装置による再治療でリカバリーするか、その時点で治療を終了するかの二者一択となります。

期待通りの結果を得るにはインフォームド・コンセントが不可欠

マルチブラケット装置による再治療(リカバリー矯正歯科治療)は難易度が高く、治療技術に習熟した歯科医師による治療が不可欠です。
また、リカバリー矯正歯科治療を行う場合、別途追加費用をご負担いただく必要があります。

リカバリー矯正歯科治療の費用は、治療を受ける歯科医院によって異なりますが、負担増となるのは否めません。
別の歯科医院で再治療を受けられる場合、初診料に加え、新たにマルチブラケット装置を用いて矯正歯科治療を行うときと同額の費用がかかります。

マウスピース型矯正を含めたすべての矯正歯科治療にいえることですが、治療を安全かつ有効に進め、期待通りの結果を得るためには事前の適切なインフォームド・コンセント(説明と同意)が不可欠です。
歯科矯正治療を希望される患者さんや保護者の皆さんは、主治医から十分に説明を受け、それぞれの治療法のメリット、デメリットをよく理解する必要があります。

その上で、適切に治療法を選択し、主治医の注意を守って治療を進めることが、歯科矯正治療で期待通りの結果を得るための大切なポイントといえるでしょう。

図1 マルチプラケット矯正の例

図2 マウスピース型矯正は透明な樹脂を歯にかぶせる

参考文献

日本臨床矯正歯科医会ホームページより
カスタムメイドのアライナー型矯正(マウスピース型矯正)に対する本会の見解

カスタムメイドのアライナー型矯正装置(マウスピース型矯正装置)に対する本会の見解


「知ってほしい!アライナーの真実」 (YOUTUBE動画、日本臨床矯正歯科医会監修)

神奈川県歯科医師会・川崎市歯科医師会会員
かわさきノエル矯正歯科 松原 望

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