スポーツと歯科

なぜマウスガードをつけるのか

 顎顔面口腔領域のケガの治療のために歯科大学附属病院や病院口腔外科を訪れた人についてまとめた文献によると、交通事故が原因の1番目にあるのですが、転倒・転落についでスポーツが3番目になっています。
 スポーツ歯科外傷の多くはマウスガードをはめることで、防止できたり軽減できたりすることが多いです。スポーツ中には、人や物と衝突して、歯で口の粘膜を傷つけてしまうことがあります。歯を覆うことで、口の切り傷は激減します。そして、歯を覆うことはマウスガードをつけている本人だけでなく、歯で相手を傷つけることを防止する効果もあります。

義務・推奨されるスポーツについて


 マウスガードをつけることが義務付けされているスポーツは、ボクシング、キックボクシング、アイスホッケー、アメリカンフットボール、ラクロス、テコンドー、空手の一部等があります。
 義務付けをされていませんが、マウスガードがよく使用されるスポーツ、あるいはマウスガードが効果的とされるスポーツとしては、バスケットボール、ハンドボール、水球、ラグビー、サッカー、柔道、相撲、スキーなどがあります。いわゆるコンタクトスポーツ(=接触の多い激しいスポーツ)や挌闘技でよく使用されます。「脳震盪の防止、軽減」も効果のひとつとされていますが、十分に科学的証明はされていません。

マウスガードを手に入れるにはどうしたらよいか

 スポーツ用品店でマウスフォームドタイプといってお湯につけて軟化して口の中で形作るものが多く売られています。
 しかし、お湯につけた熱々のマウスガードで口を火傷してしまう人がいて危険ですし、形をなんとかつくれたとしても口にぴったりのものをつくるのは大変難しいです。装着感も悪いようです。
 もう一つの方法として、現在おすすめしているのは、歯科医院でつくってもらう方法があります。カスタムメイドタイプといいます。歯科医に歯型とかみあわせをとってもらい、次に来た時に出来上がったマウスガードを口の中で微調整してもらい完成です。
 カスタムメイドタイプマウスガードは、口にぴったりしていて、効果が高く、装着感もマウスフォームドタイプより断然よいです。効果や安全性の面でも、装着感の面でもカスタムメイドタイプがお勧めです。さらに、種目やポジションによっては、厚みあるいは質の異なるマウスガード剤を高圧で層状に張り合わせる(ラミネート)ことで、強度、適合性、デザイン性、衝撃吸収性などの点から現在、最も推奨されているマウスガードも選択できます。一度、歯科医師に相談してみましょう。

●参考文献

Quarrie, K. L., Gianotti, S. M., Chalmers, D. J. and Hopkins, W. G.:An evaluation of mouthguard requirements and dental injuries in New Zealand rugbyunion, Br. J. Sports Med., 39:650-654, 2005.
・ ラグビーフットボール連盟(競技人口120,900人)が対象
・ 1997 年からマウスガード 義務化
・ 2003年の歯科外傷発生率は43%減(対1995年比)
・ マウスガード 未使用者の歯科外傷発生リスクは4.6 倍
・ 治療費抑制効果は平均321 NZD 減(25,680 円:1 NZD=80 円で計算)。
  推計で1.87 million NZD抑制(1 億4,960 万円のコスト削減の計算)

Cohenca, N., Roges, R. A. and Roges, R.:The incidence and severity of dental trauma in intercollegiateathletes, J. Am. Dent. Assoc., 138:1121-1126,2007.
・ 南カリフォルニア大学体育学部での51 歯科外傷事故報告例の分析調査(1996~2005)
・ マウスガード 使用者に比べて,未使用者では外傷発生率は5 倍になる。

神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員
平成横浜病院 青山 繁

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