歯ぎしりについて

歯ぎしりについて

執筆者
神奈川県歯科医師会会員・鎌倉市歯科医師会会員 原 宣道

「いびき」「寝言」「歯ぎしり」といった睡眠時に生じる寝室内の「騒音」は、ひどくなるとご本人だけでなく、同室者の睡眠も妨げるおそれのある少々困った問題です。
今回はそのうちの「歯ぎしり」についてのお話です。

 

ごまめの歯ぎしり、夜の歯ぎしり

ことわざに「ごまめの歯ぎしり」という言いまわしがあります。ごまめとはイワシの稚魚のこと。「ごまめの歯ぎしり」というのは「力のない者が、いたずらにいきりたち悔しがること」の喩えです。悔しい時やつらい時に歯を食いしばることは、本能的なストレス発散法のひとつと考えられています。

夜、寝ているときに起きる「歯ぎしり」。大きな音が出て、周りの家族が寝られない、などということもあります。こうした夜間の歯ぎしりも精神的なストレスが背景にあり、その発散のための運動であるという研究報告もあります。しかしながら、実際の夜間の歯ぎしりの原因は、歯や噛み合わせの問題、睡眠の質、あるいは性格などの因子も複合的に関わるため、いまだ明確ではありません。睡眠時にギリギリと軋音を発する人が、起きているときに意識的に歯ぎしりの音を出そうとしてもうまくできない、なんとも不思議なものです。

 

歯ぎしりが健康に及ぼす影響とは?

 

正常な人では、咀嚼などで上下の歯が接触している時間は、一日のうちせいぜい数分間程度です。それが夜間に歯ぎしりをする人の場合、歯ぎしりの時間は数十分から数時間にも及び、その力はふだん噛むときの10倍程度にもなることがあります。それほどの強い力が長時間にわたり、歯やあごなどに対して伝われば、様々な悪影響をきたすおそれがあります。また、軋音のない食いしばりのように、周囲の方も気がつかない場合や自覚がないまま習慣化することもあります。

次のような症状がある場合には注意が必要です。

 

■顎関節やあごの周囲の痛み

朝起きた時に頬やこめかみのあたりにだるさを感じたり、口を大きく開けると耳の前あたりが痛む、といった顎関節症を、歯ぎしりが引き起こすことがあります。これはあごの筋肉痛のようなもので、それがさらに肩こりなどに影響を及ぼすことも考えられます。

■歯の摩耗や破損

長期間の歯ぎしりにより、噛み合わせるときに接触する歯面がすり減るだけでなく、過度な力により歯が歪み、歯の側面がくさび状にえぐれてくることもあります。虫歯ではないのに、冷たいものや歯ブラシの刺激で歯がしみる、ということで初めて気付くような変化です。また、歯ぎしりによって、虫歯治療で詰めていたものがとれてしまったり、歯が割れたりすることの間接的な原因になることもあります。

■歯ぐきの痛み

歯根と歯ぐきは歯根膜という線維性のクッションでつながっています。しかし歯ぎしりによって、歯根膜を介して過度な力が歯ぐきに伝わることにより、歯を支える組織も破壊されます。そのため歯ぐきに痛みがでたり、歯がぐらついてしまったり、歯周病があれば悪化させる原因になります。

 

 

ナイトガードの装着が効果的!

歯ぎしりに対する治療は、ナイトガードと呼ばれるマウスピースを夜間装着することが効果的です。ナイトガードは歯科医院で歯型をとり、オーダーメイドで作るものですので、違和感なく歯やあごを保護し、軋音防止ができます。歯ぎしりの程度や期間によっても症状は様々ですので、気になることがあれば歯科医に気軽にご相談下さい。またご本人が自覚されていない場合は、ご家族や周囲の方が優しくお伝えしてさし上げると良いでしょう。あとは何よりもストレス発散の術を身につけ、リラックスしておやすみになることを心掛けましょう。

(鎌倉市歯科医師会 原歯科医院  原 宣道)

 

 

 

執筆者情報
原 宣道
神奈川県歯科医師会会員・鎌倉市歯科医師会会員
原歯科医院

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