老化防止はお口から~第一歩は「キレイなお口」をつくること~

コロナ禍で出不精になっていませんか?

 コロナ禍でリモート会議などを利用した在宅勤務が増え、「運動不足で太った」「糖尿病や高血圧のリスクが上がった」という方々も多いことでしょう。
 コロナ禍の影響は、働き盛りの世代の方々だけにとどまりません。
 シニア世代の方々にとっても、日ごろの買いものや旅行、スポーツ、趣味、仲間との交流などの機会が減ったことにより、身体機能や認知機能が低下する「フレイル」の増加が懸念されています。

 ついつい面倒くさくなってしまい、何かと理由を付けて出不精になっていませんか。
 もちろん十分な感染対策に努める必要はありますが、コロナ禍であっても全身の筋力や活動が低下しないよう、家にこもらず自分から積極的に行動するようにしましょう。
 大切なのは「キョウヨウ(今日の用事)」と「キョウイク(今日行くところ)」をつくって自分から動くこと、社会とのつながりをもつことです。

 フレイルを防ぐためにもう1つ大切なことは、お口の健康に気を配り、ささいなトラブルを見逃さず適切に対処することです。
 お口の健康への意識の低下から、食べる機能が障害され、低栄養状態、フレイルにおちいることを「オーラルフレイル」と呼びます。フレイルやオーラルフレイルについては、この「オーラルヘルスオンライン(Oral Health Online)」のなかでも詳しく説明していますので、ぜひお読みください。

外見を美しく、若々しくする意外な効用

 ところで、皆さんは「お口がキタナイとどうなるか」と聞かれたら、どうお答えになるでしょう。
 半世紀前の50年前は、「むし歯になっちゃう」とお答えになる方がほとんどでした。25年前以降であれば、「むし歯だけでなく、歯周病にもなっちゃう」とお答えになる方が増えたことでしょう。
 最近では、さらに「誤嚥性肺炎のリスクが高くなる」とお答えになる方もおられるかもしれません。

 では、「お口がキレイだとどうなるか」と聞かれたら、皆さんはどのようにお答えになりますか。
 最近、高齢者の医療や介護を担う医療従事者、ケアワーカーなどの間で、「化粧療法」という言葉が注目されています。ここでいう「化粧」とは、単にメイクアップのみでなく、お肌や手、爪、髪、頭皮のケアなども含みます。
 化粧療法とは、外見を美しく、若々しくすることで、自信や満足感、自己肯定感、自分らしさを取り戻して社会性を向上するための手段といえます。
外見をキレイにすることで外出の頻度が上がり、人との交流や社会参加の機会も増して、心身機能の低下からフレイルに陥ることを防ぐことが期待できます。

 ベストセラーとなった内館牧子さんの小説『すぐ死ぬんだから』を読むと、外見をキレイにすることによる、このような効用に思い当たります。
 主人公の78歳女性は60代までは身なりをかまいませんでしたが、ある日、実年齢より上に見られて目が覚めます。「人は中身より外見を磨かねば」と一念発起し、化粧やオシャレに気を配って外見を美しく装い、活動的に生きていく姿がイキイキと描かれています。

「キレイなお口」が幸せの扉を開く

 外見を美しく若々しく整え、社会性を高めるためには、お口をキレイにすることも大切です。
 実際、70代の男性がホワイトニング施術を受けたことによって、口もとに自信がつき、外出する頻度が増して社会性が向上したという1例も報告されています。
 まさに、「地域社会との交わりは輝く口もとから」。いくつになっても外見を美しく、若々しく整えることの大切さを物語る好例といえるでしょう。

 お口がキレイだとどうなるでしょうか。笑顔が増えます。笑顔のまわりには仲間が集まります。仲間が増えると、行動範囲が広がり、会話も弾みます。そして、社会とのつながりも深まります。
 つまり、お口をキレイにすることによって、オーラルフレイルやフレイルを防いで身体の健康の維持・向上に役立つだけでなく、心の健康にもよい効果が期待できるというわけです。そうなれば、ご本人や周囲の人々はもとより、社会全体もハッピーになれるのではないでしょうか。

 人生100年時代、愉快に過ごしましょう。
 身体の衰えや老化を予防するためには、まずはご自身のお口の健康に関心をおもちになることが大切です。
 アンチエイジングの第一歩は、「キレイなお口」からといえるのではないかと考えています。

■参考

シニアライフアドバイザー松本すみ子、フレイル講座第4部「社会とのつながり」、読売新聞 2020.3.30
池山和幸、「粧う」ことで健康寿命を延ばす化粧療法、クイントエッセンス出版、2019、総ページ95頁
内館牧子「すぐ死ぬんだから」講談社、2018、総ページ323頁
干川摂、中西生美、石川明子、石田鉄光「審美歯科によって高齢者の社会性が向上した一症例」日本老年歯科医学会第28回学術大会、2017、老年歯学 第32巻第2号 207頁~208頁
瀬谷区からだまるごと健康フェア:瀬谷歯科医師会講演会「地域社会の交わりは輝く口もとから」日本歯科大学病院 総合診療科-ホワイトニング外来 干川摂、2018

神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員
ヤゴオリ歯科医院 院長 弥郡彰彦

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