スポーツドリンクの飲みかたにご注意!

歯の健康を守るために

汗かく季節に欠かせないのは、体温調節と適度な水分補給。
特に熱中症にかかりやすい高齢者やこどもたち、炎天下でスポーツをする人たちにとって、のどが渇く前に水分補給に努めることは「命綱」といってよいほど大切です。

スポーツドリンクは、汗で失われた水分や電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム)と運動で消費したエネルギーをすばやく補給できるため、熱中症対策だけでなくスポーツのパフォーマンスの維持向上にも役立ちます。
しかし、歯の健康を考えると、スポーツドリンクの飲みかたにはいささか注意が必要です。

図1 スポーツドリンクのとりすぎはむし歯の原因に

日本歯科医師会「歯とお口のことならなんでもわかるテーマパーク8020」より転載

砂糖の含有量が多く、酸性度が高いことに注意!

実は、一般に市販されているスポーツドリンク500mlには、エネルギーを補うためスティックシュガー10本分に相当する約30gの砂糖が含まれています。
砂糖は、むし歯の原因菌である「ミュータンス連鎖球菌」の餌となります(図1)。つまり、スポーツドリンクをとりすぎると、この菌が増殖して歯垢(プラーク)が形成され、多量の酸がつくられることによりむし歯ができやすくなるというわけです。

もう1つ留意しておきたいのは、一般のスポーツドリンクがpH3.5と、意外に酸性度が高い飲みものであることです(図2)。
歯はpH5.4で溶けはじめますので、スポーツドリンクを飲み過ぎると、ミュータンス連鎖球菌の出す酸も相まって、さらにむし歯ができやすくなってしまいます。

図2 意外に高いスポーツドリンクの酸性度(pH)

 

飲みかたを工夫してむし歯リスクを減らす

このようにスポーツドリンクには砂糖が多量に含まれ、酸性度も高いことから、飲みかたを工夫しないとむし歯のリスクが高まることに注意してください。

実際、日常的にスポーツドリンクを摂取しているアスリートの皆さんは、一般の方々に比べむし歯(う蝕)や歯のエナメル質が溶ける酸蝕症(さんしょくしょう)の発症率が高いことが、国内外の研究成果から明らかにされています。
たとえば、2012年のロンドンオリンピック参加選手 278 名を対象に行なわれた調査の結果、う蝕の有病者率は 55.1%,酸蝕症の有病率は 44.6%もの高値を示しました。

とはいえ、運動時の積極的な水分補給が必要不可欠とされる現在、スポーツドリンクを飲まないというわけにはいきません。
そこで、歯に対するリスクを軽減する飲みかたを提案します。

歯の健康を守るためには、スポーツドリンクをチビチビ、ダラダラ飲むよりは、ゴクゴクっと一気に飲んだほうがよいでしょう。
また、ボトルからじかに飲んだり、コップについで飲んだりするよりは、ストローを奥までくわえて飲んだほうが、う蝕や酸蝕症のリスクは下がります。

飲む時季も考えましょう。
大汗をかき、体力の消耗も激しい夏の盛りには、やはりスポーツドリンクを飲むほうがよいと思います。しかし、涼しい季節に短時間の運動をするだけなら、水や冷たいお茶、麦茶などで十分ではないでしょうか。

歯の健康を守るため、いま一度、スポーツドリンクの飲みかたに注意してみてください。

参考文献

・上野俊明. スポーツドリンクの飲み方について 日本歯科医師会雑誌. 2020.02; 72 (11): 16-17.
・岡崎好秀・編著「世界最強の歯科保健指導 上巻」クインテッセンス出版・刊 2017年7月発行

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