顎関節症って治るの!?
- 執筆者
- 神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員 青山 繁
-
2025/04/21
- 歯とお口の基礎知識
この記事の目次
顎関節症の主な症状
あごに痛みがある、口を大きく開けづらい、口を開閉するとカクカクと音がするなどの不快な症状に悩まされていませんか。このような症状が1つでもあれば、顎関節症(がくかんせつしょう)かもしれません。顎関節症は決して珍しい病気ではなく、必要以上に心配する必要はありません。しかし食事や会話がしづらいなど、日常生活に支障をきたしている場合は、一度かかりつけの歯科医に相談してみましょう。
顎関節症の主な症状①:顎が痛い
・何もしなくても顎や、その周りに痛みがある
・口の開閉で特に痛みがあり、ちょっと顎を動かしただけで痛むことがあります。
・硬いものを食べると顎が痛くなります。
顎関節症の主な症状②:顎が疲れる
・食べ物を噛んでいると顎がだるくなります。
・喋っていると顎がくたびれます。
顎関節症の主な症状③:口を大きく開けられない
・大きなあくびやリンゴの丸かじりなど、口を大きく開けることができなくなります。
・人差し指から薬指までの指3本が入る大きさまで口が開きません。
顎関節症の主な症状④:口を開けると音がする
・口を開閉すると耳の前で耳障りな音が聞こえます。
・カクッという音や、砂利を踏んだような音が聞こえます。
顎関節症になる原因とは
顎関節症はこれまで噛み合わせや歯ぎしりが原因ではないかと考えられてきました。しかし現在では精神的なストレスや生活習慣をふくめ、多くの要素が絡み合って発症するのではないかと考えられています。
歯ぎしりや食いしばりなどの癖や対人関係のストレス、片側だけで噛む癖や、堅いものばかり好んで食べる食習慣など、発症するきっかけはさまざま。複数の要素が積み重なって発症する傾向があるため、原因を1つに特定できないのです。
顎関節症の治し方
日常生活に支障をきたすこともある顎関節症ですが、
ナイトガード
顎関節症の主な原因の一つに、
・歯ぎしりや食いしばりから歯を保護する
・顎関節への過剰な圧力を分散させる
・筋肉の緊張を和らげる
という効果が期待でき、
市販で購入することも可能ですが、
スプリント療法
スプリントは、より専門的な治療用マウスピースです。
ナイトガードが顎関節症の原因の一つである歯ぎしりや食いしばり
・顎関節への過度な負担の軽減
・筋肉の緊張やけいれんの緩和
・歯の摩耗や損傷の防止
・顎の正しい位置の再教育
が期待できます。
なお、症状によって着用するスプリントの種類や装着時間・
薬物療法
症状がひどく我慢できない場合や、
主な薬物療法には下記があります
・消炎鎮痛剤:イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(
薬物療法はあくまで一時的な症状緩和に効果的な治療のため、
自宅でできるセルフケア
軽度の顎関節症の場合は、
顎関節のセルフマッサージ
・咬筋(こうきん)マッサージ:
・側頭筋マッサージ:こめかみ周辺の筋肉(側頭筋)
・顎関節周囲のマッサージ:耳の前方にある顎関節の周囲を、
・首と肩のマッサージ:首の後ろやトラップ筋(
温冷療法
急激に痛みが現れた時や口がほとんど開かなくなってしまった場合
・氷嚢やコールドパックを薄いタオルで包み、患部に10〜
口を大きく開けたり、噛んでいない状態では痛みが無い場合は、
・蒸しタオルなどで患部を15〜20分間温めます
もちろんセルフケアだけでは完治は難しいのが顎関節症です。
約7割の方が1年以内に改善
顎関節症かもしれないと思い始めると、このままにしていたら大変なことになるのではないかと不安に駆られる方が少なくありません。
しかしあごに違和感がある方のうち、約7割の方が1年以内に症状が改善しているとのデータがあります。痛みがない方は特別な治療をせず、しばらく様子をみても構いません。ただ様子をみているうちに症状が強くなったり、痛みがひどくなったりした場合は、歯科医院を受診しましょう。顎関節症の治療は、内服薬の処方やお口を開く範囲を広げるための関節可動化訓練など理学療法が中心になります。どうしても痛みがコントロールできない場合を除き、手術がおこなわれることは、ほとんどありません。
近年は患者さんの日常生活上の癖や何気ない習慣が症状の出現に関係していることがわかってきました。そのため患者さんご自身も症状を改善するために、生活習慣や癖を見直したり、セルフケアをおこなったりして、積極的に医療に参加する必要があります。
顎関節症の専門医を見つける
顎関節症でも痛みが強く出ていたり、長年辛い状態が続いているような場合など、専門的な治療が必要な場合があります。そのような場合は、大学病院や市民病院の口腔外科を受診するか、関節症を専門とする歯科医院を受診されたほうがよいでしょう。
また、顎関節症には日本顎関節学会が認定した専門医がいるのはご存じでしょうか。
下記サイトに顎関節学会認定の「専門医・指導医・認定医」
専門医・指導医・認定医一覧|一般社団法人日本顎関節学会(
https://kokuhoken.net/jstmj/
顎関節症に関するQ&A
以下、顎関節症に関してよくいただくご質問にお答えします。
顎関節症には多くの要因があり、噛み合わせだけが原因ではありません。したがって矯正治療で噛み合わせを改善しても、症状が改善するとは限りません。矯正治療が高額であったり、歯を削ったり抜いたりする治療計画を提示された場合は、少し慎重になったほうがよいかもしれません。
顎関節症の治療を行った場合、稀に症状が改善することはありますが、必ず治るとは限りません。肩こりや腰痛が本当に顎関節症に関係するものか、他の病気に原因があるのかを慎重に見極める必要があります。肩こりや腰痛の改善を目的に歯科に来院すると、不要な検査や治療を受けることになるかもしれません。
そのような情報が本や雑誌、テレビのようなメディアに溢れています。全くの誤りでないとはいえ、いずれも科学的根拠(エビデンス)に乏しく、誤解を招く表現になっています。メディアのセンセーショナルな情報は、あくまでも参考程度にとどめておきましょう。
顎関節症の辛い症状でお悩みの方は不確かな情報を鵜呑みにせず、お近くの歯科医院に相談してみましょう。
参考文献
東京医科歯科大学歯学部附属病院 顎関節治療部ホームページより引用、改変
http://www.tmd.ac.jp/dent/tmj/tmj-J.htm
- 執筆者情報
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青山 繁神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員
平成横浜病院