人類学から見た「健口」作り

執筆者
神奈川県歯科医師会・川崎市歯科医師会会員 金井久弥

国立科学博物館人類学の名誉研究員である馬場悠男先生※1の研究や提案について、多くの視点で現代社会の食生活や健康問題を振り返るための重要な洞察が詰まっています。

馬場先生の主張を要約すると、以下のポイントが挙げられます。

 

歯並びと顎の発達に関する変化

  1. 縄文人と弥生人の特徴比較
    • 縄文人は小さな歯と頑丈な顎を持ち、硬い食物をよく噛む生活をしていたため、歯並びが良好だった。
    • 弥生人は歯が大きく、顎も大きいが、やや華奢な特徴を持つ。
    • 現代日本人は、弥生人の特徴を受け継ぎつつ、柔らかい食生活の影響で顎が小さくなり、歯列不正が増えている。
  2. 時代ごとの変化
    • 古墳時代:顎はまだ頑丈だが、徐々に弱くなり始める。
    • 江戸時代:階級によって食生活の違いが顕著に現れ、華奢な顎や歯列不正が増加。
    • 現代:軟らかい食生活の影響で顎がさらに小さく、歯並びが最悪の状況に。
  3. 狭窄歯列弓の問題
    • 歯列が狭くなることで、咀嚼機能や健康に悪影響を及ぼし、睡眠時無呼吸症などのリスクが高まる。

 

解決策:食生活の改善

  1. 硬い食物の導入
    馬場先生は、子どもたちの咀嚼能力を育てるために、硬い食物を給食に取り入れることを提案。

    • 特に「アジの干物素揚げ給食※2」のような、手で食べて噛みちぎる経験が重要。
    • 子どもたちがこのような食生活に慣れることで、顎や顔面筋の発達を促進。
  2. 全国展開への期待
    • 教育現場での取り組みを全国的に広げることで、日本人全体の健康状態を改善する可能性がある。
    • 給食だけでなく、家庭の食卓でも硬い食物を増やす意識改革が必要。
  3. 教育の重要性
    • 保護者や教育者に対する啓発が、子どもたちの食習慣改善に直結する。

 

総合的な提案

馬場悠男先生の提案は、食生活を通じた健康増進の一環として非常に合理的であり、現代の日本社会が直面する問題を解決するための具体的な道筋を示しています。特に、子どもたちの歯や顎の発達が、将来の健康や社会的な福祉に大きく影響することを考えると、こうした活動が持つ意義は計り知れません。

 

参考:

※1馬場悠男(ばば ひさお) 1945年、東京生まれ座間育ち。国立科学博物館名誉研究員。座間市教育委員。日本学術会議連携会員。元日本人類学会会長。東京大学生物学科卒。獨協医科大学解剖学助教授を経て、1988年から国立科学博物館主任研究官。96年から同人類研究部長および東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻教授を兼任。2009年定年退職。

※2座間市の学校給食で食育の取り組み

執筆者情報
金井久弥
神奈川県歯科医師会・川崎市歯科医師会会員
金井歯科医院

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