
フッ素と銀の作用でむし歯を抑える
- 執筆者
- 神奈川県歯科医師会会員・横浜市歯科医師会会員 カナリア歯科クリニック院長 川原 綾夏
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2026/06/30 - 歯とお口の基礎知識
むし歯の進行を抑えるために、フッ素と銀を使った治療法があります。
サホライドと呼ばれるもので、
治療を嫌がるような小さなお子さんなどに活用することがあります。
今回はサホライドの効用や使い方についてわかりやすくお伝えします。
サホライドとは、いったいどんなもの?
サホライドという名前、あまり耳なじみがないかもしれません。サホライド液には、フッ化ジアミン銀という物質が含まれています。歯科で用いるのは「サホライド液歯科用38%」というもので、1mlの中にフッ化ジアミン銀が380mg、つまり38%入っています。このフッ化ジアミン銀が、むし歯の進行を抑制する効果を発揮してくれるのです。
フッ化ジアミン銀が作られたのは1960年。大阪大学の山賀禮一教授によって合成されました。江戸時代に流行していた風習『お歯黒』を参考に開発されたものでした。お歯黒は江戸時代の主に既婚女性に広まっていた風習で、歯を黒く染め上げるものです。当時から、お歯黒を施した歯はむし歯になりにくく、またむし歯になったとしても、むし歯の進行を止めることが分かっていました。それを踏まえて研究が進み、ついにフッ化ジアミン銀の合成に成功したのでした。合成から10年後の1970年には「サホライド」という名前で製造承認を取得し、販売が始まりました。

サホライドはなぜ、むし歯を抑えられるのか?
サホライド、つまりフッ化ジアミン銀は、フッ素と銀が含まれる化合物。銀にはタンパク質を固定する作用が、そしてフッ化物による不溶性塩を生成する作用があり、その両方の作用がかみ合って、むし歯の進行を抑制してくれます。
サホライドに含まれる銀にはタンパク質を固める効果があるため、歯の表面のエナメル質にあるタンパク質を固め、むし歯の原因となる菌の侵入を防いでむし歯を抑えます。また表層のエナメル質の下には象牙質があり、エナメル質より象牙質の方が、タンパク質が豊富です。そのため、エナメル質を超えて進行してしまったむし歯に対して、銀は象牙質のタンパク質を固めることで、より強い作用を発揮します。
一方で、サホライドに含まれるフッ化物は歯の成分のうち無機質のほうに作用します。無機質の成分は主にハイドロキシアパタイトですが、フッ化物が結びつくと強力な結晶構造に変化します。食べ物を食べると口の中が酸性になり、歯のミネラルが溶け出ていく「脱灰」が起こりますが、フッ化物はその脱灰を抑制してくれるのです。さらにフッ化物は、溶け出たところを元に戻す再石灰化を促す作用も持っています。
これらの銀とフッ化物の作用が合わさって、サホライドはむし歯を強力に抑えたり、進行を止めたりできるのです。

サホライドはどんなケースのときに使うの?
サホライドを使わない通常のむし歯治療の場合、むし歯になってしまった歯は、むし歯菌による感染が起こっているため、むし歯部分を取り除いてこれ以上感染が広がらないようにします。そしてその後、レジンを詰めたり金属を入れたりして、失ってしまった歯を回復させます。レジンを詰めるなどの治療を進める際には、ある程度の時間、口を開けたままにする必要などがあります。
このように、むし歯の治療は患者さんにそれなりの負荷がかかるものですが、特に小さなお子さんの場合、治療の意味合いの理解が及ばず、そもそも治療がどうにもできないようなケースもあるものです。そうした場合には、サホライドを歯に塗ることさえできれば、むし歯の進行を抑え、感染が広がるのを防いでくれるので効果的です。
また、高齢者のむし歯の患者さんの中には、歯科医院に来院することが難しい場合もあります。介護が必要な患者さんなどでは、口を開けての治療が困難な場合もあります。そうした患者さんにも、サホライドを歯に塗って対応することもあります。
ただし、サホライドを塗ると、むし歯の部分は黒く変色します。そのため、審美性を優先したい、というケースでは、サホライドによる治療は避けるようにします。
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カナリア歯科クリニック院長 川原 綾夏神奈川県歯科医師会会員・横浜市歯科医師会会員
カナリア歯科クリニック



