「矯正治療ではない矯正治療」ってなんだろう?

「矯正治療ではない矯正治療」ってなんだろう?

執筆者
神奈川県歯科医師会会員・海老名市歯科医師会会員 和田 信吾

「矯正治療」というと、どうしてもワイヤー矯正のように、見た目に目立つような治療のことを思い浮かべがちです。
いっぽうで、いわゆる矯正治療とはちょっと違うのですが、名前に「矯正」という言葉が入っている治療法もあります。
いわば「矯正治療ではない矯正治療」です。
この治療法にはメリットとデメリットがありますので、それらを両方ともよく理解しておきましょう。

 

「セラミック矯正」とは?

最近、「セラミック矯正」という言葉を耳にします。

「セラミック矯正」という言葉には、「矯正」という文字が入っています。しかし、歯を動かすことで治していく従来の矯正治療(ワイヤー矯正やマウスピース矯正など)とは異なり、セラミック矯正は歯を削り、セラミック製の被せ物(クラウン)や、歯の表面に薄いセラミックを貼り付けるラミネートベニアを装着することで、歯並びや歯の色、形を改善する治療法のことをいいます。入れ歯やインプラントなどと同じく「補綴(ほてつ)治療」の一種とも言えます。

「セラミック矯正」は、通常の矯正治療と違い、短期間で見た目の改善ができる点が大きな特徴ですが、メリットとデメリットをよく理解した上で実際に行うかどうかの検討をすることが重要です。

 

セラミック矯正(補綴)の仕組み

セラミック矯正とはどんな治療なのか、もう少し詳しくお話します。

まず、歯並びを悪く見せている歯や、形・色が気になる歯を削ります。そして、その上から患者さんの希望に合わせた形、大きさ、色のセラミックの人工歯を被せたり、薄いセラミックを貼り付けるラミネートベニアを施します。そうすることで、歯並びを整えたり、歯の色を白くしたりします。

通常の矯正治療と大きく異なるのは、歯を直接動かすわけではない、という点です。そのため、治療自体は比較的短期間で完了します。

 

セラミック矯正(補綴)のメリット

セラミック矯正(補綴)のメリットは大きく3つあります。

  • 短期間で治療が完了する: 数回の通院で、おおよそ1ヶ月〜3ヶ月程度で治療が完了することが多いです。従来の矯正治療のように年単位の期間はかかりません。
  • 歯の色や形も同時に改善できる: 歯並びだけでなく、歯の色が気になる場合や、歯の形を整えたい場合も、改善することが出来ます。
  • 後戻りの心配がない: 歯を動かしているわけではないため、従来の矯正治療のような「後戻り」の心配がありません。

 

セラミック矯正(補綴)のデメリット・注意点

いっぽうで、「セラミック矯正」にはさまざまなデメリットや注意点があります。

  • 歯並びを整えるために、「健康な歯を削る」必要があります。一度削った歯は元には戻せないため、慎重な検討が必要です。
  • 歯を削ることで、歯が脆くなったり、神経を抜く必要が生じたりする場合があります。神経を抜いた歯は、さらに脆くなるリスクがあります。
  • 削った歯は歯根に負担がかかりやすくなります。そのため、歯の根が割れる「歯根破折」のリスクが高まることがあります。歯根破折が起こると抜歯が必要になる可能性もあります。
  • セラミックの被せ物やラミネートベニアは一生ものではなく、平均寿命は10〜15年程度とされています。欠けたり割れたりする可能性があり、定期的な交換が必要になる場合があります。再治療のたびに歯がさらに削られることも考慮する必要があります。
  • 被せ物と天然歯の境目に段差が生じることがあり、汚れが溜まりやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクが上昇する可能性があります。治療後の丁寧なケアと定期的な歯科検診が不可欠です。

 

メリットとデメリット・両方よく考えて

一度削ってしまった歯は、元に戻すことができません。

セラミック矯正は、短期間で見た目を大きく改善できる魅力的な治療法ですが、健康な歯を削るという不可逆的な処置を伴うため、メリットとデメリットを十分に理解し、信頼できる歯科医師とよく相談して、ご自身の歯の状態や将来のことも考慮した上で慎重に検討することが大切です。

 

(神奈川県歯科医師会 広報委員 和田信吾)

執筆者情報
和田 信吾
神奈川県歯科医師会会員・海老名市歯科医師会会員
和田歯科診療室

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