ものをのどに詰まらせた! 覚えておきたい対処法

 気道(気管や肺などの通り道)に食べものや異物、唾液が入ることを誤嚥(ごえん)と言います。
 本来、食べものは食道を通過していきますが、飲み込む力が弱まっていたり、あわてて飲み込んだりすると誤嚥を引き起こし、重大な事故につながる場合もあります。

 今回は、誤嚥による窒息死事故を防ぐための対処法をご紹介しましょう。

特に高齢者と乳幼児は誤嚥に注意!

 誤嚥でもっとも怖く、緊急に対応しなくてはならないのは窒息です。
食品の誤嚥による窒息死事故は高齢者に多く、65歳以上の死亡者数は年間約3,500人以上で、このうち2,500人以上を80歳以上が占めています。

 餅や餅を含む食品の誤嚥による窒息で亡くなった65歳以上の高齢者は、2018~19年の2年間に計661人にのぼり、こうした窒息死事故のおよそ半数は1月に起きています1)

 一方、14歳以下の子どもの窒息死事故は、2010~14年の5年間に623件発生しています2)。年齢別にみると0歳児が65.0%ともっとも多く、窒息死の要因としては就寝時の姿勢のほか、食品、玩具などの誤嚥が挙げられます。

誤嚥による窒息をおこしやすい要因

 高齢者が誤嚥によって窒息する要因としては、飲み込む力の低下や唾液量の減少が考えられます。
また、子どもが食品を誤嚥する要因としては、噛む力と食事時の行動が挙げられます。

 通常、生後6ヵ月で乳歯が生え始め、3歳ごろに乳歯が生え揃います。しかし、小児の場合、奥歯が生えていなかったり、生えそろっていても噛む力が弱かったりするため、固いものを丸のみしてしまうことがあるのです。

 また、食べることに集中していない、正しい姿勢で食べていないといった食事時の行動も誤嚥のリスクになります。

窒息がおきているときのサインを見逃さない!

 窒息に迅速に対応するためには、窒息がおきているときのサインを見逃さないことも大切です。

 具体的には、苦しそうにしている、咳き込んでいる、チョークサインをしている、チアノーゼ(血中の酸素不足により顔、特に唇や手足が青黒くなっている状態)が出ているなどのサインです。
 ただし、高齢者はチョークサインをせずに黙っていることも少なくありません。

チョークサイン

咳き込んでいたら咳を続けるよう指示して励ます

 気道が閉塞して3分ほど経つと意識がなくなります。窒息してから時間が経てば経つほど、死亡のリスクは高まります。

 誤嚥を起こした人に呼びかけても反応がない場合、ただちに119番通報をする必要があります。しかし、救急車の到着までは平均8分以上かかるため、その場にいる人が適切に対処をすることが重要です。

 先述のような窒息がおきているときのサインがみられ、周囲の状況から誤嚥が疑われる人を発見したら、まずは大声でほかの人を呼び、来てくれた人に119番通報を頼んでください。

 誤嚥を起こした人が咳き込んでいる場合、気道が完全には閉塞していないといえます。介抱する人は咳き込んでいる人の状態を見守りながら、咳を続けるように指示して励ましてください。

 咳をしていないで苦しんでいたり、咳が止まってしまったりした場合は、気道が完全に閉塞してしまった可能性があります。

気道が完全に閉塞した場合の対処法

 気道の完全閉塞を起こした人が成人の場合、次に示す「背部叩打法」や「腹部突き上げ法」を試みてください。

■背部叩打法
 介抱者は窒息をおこした人の頭を胸よりも低い位置にし、肩甲骨の間を叩きます。叩く手は手首に近いところを使います。
窒息をおこした人の口からのどに詰まったものが出てくるかどうか見ながら、5回ほど叩きます。

■腹部突き上げ法
 介抱者は窒息を起こした人の後ろに回り、背後から手を回してへその位置を確認します。
もう片方の手で握りこぶしを作り、親指を傷病者のお腹側に向けてへそより上、みぞおちよりも下の位置にあてがいます。

 へそを確認した手で握りこぶしを包み、一気に上方へ引き上げます。物が出てくるまで5回ほど繰り返します。

 これは、空気鉄砲のように肺の中の空気を利用してのどに詰まったものを吐き出す方法です。

 窒息した人の口から物が出てくるまで、背部叩打法と腹部突き上げ法を繰り返します。

 1歳未満の子どもには腹部突き上げ法は行わず、背部叩打法だけを行います。
ものが口から見える場合のみ、ピンセットや箸などで取り除きます。
ものが見えない状態で、箸を入れたり、指を入れたりするとさらにのどの奥にものを押し込んでしまうため、止めましょう3)4)

 回復が見られず、意識を失ってしまった場合は心肺蘇生法を行います。気道内異物による窒息の救急蘇生は、時間との勝負です。
とはいえ、あわてずに最良の方法を試みてください。

 誤嚥を引き起こさないためには、高齢者の場合は飲み込む力を維持するトレーニングを行う、食事前に水分を摂って飲み込みやすくする、食べものを小さく切るなどの工夫も必要です。

 日ごろからこうした工夫をするとともに、いざというときのために誤嚥による窒息の対処法を覚えておいてください。

神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員 川原綾夏

参考文献

1)堀口逸子.e-ヘルスネット. 厚生労働省. 2021年7月29日
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-10-001.html(2022年1月6日閲覧)
2)子供の事故防止に関する関係府省庁連絡会議.子どもの事故の現状について. 2017年10月30日
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/children_accident_prevention/pdf/children_accident_prevention_171031_0002.pdf(2022年1月6日閲覧)
3)美濃良夫.急変事対応マニュアル.株式会社講談社.2007年.p351
4)郷木義子.目で見てわかる応急手当マニュアル.ふくろう出版.2020年.p254

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