予約制の歯科医院が多い理由【前編】 

患者さん、歯科医院双方に大きなメリット

歯科医院へ通院すると、ほとんどの方が受付や電話、ネットなどで次回受診の予約を取られると思います。受診のたびに次の受診の予約をとり、長期間にわたって何回も通院することにうんざりする方も少なからずおられることでしょう。
そこで、前編、中編、後編の3回にわたり、予約制の歯科医院が多い理由と患者さんのメリットを考えてみたいと思います。

歯科診療は常に唾液や血液を取り扱うので、外科的診療です

まず、皆さんにご理解いただきたいことは、そもそも歯科治療は1回で終わることのほうが珍しく、ほとんどの場合、数回もしくは数ヵ月かかるということです。
歯科治療は、実は「外科」に相当します。
麻酔をし、歯を削ってむし歯を除いたり、歯の神経を除去して痛みをなくしたりするだけでなく、歯周病の治療のために歯石をとったりすることも、外科的な処置(歯科外科処置)といえます。

これらの治療は、歯科医師が実際に手を動かして行う「処置」ですので、歯科医師は、治療中、患者さんにかかりきりになります。
もちろん歯科でも救急の場合であれば、医科の外科処置と同様に即日手術を行うことがあります。しかし、基本的には検査、診断、処置、経過観察の流れで適切に治療を進める必要があるため、患者さんに一定の期間、何回か受診していただいています。

また、病院でもキャパシティがいっぱいのときには救急車の受け入れが困難なケースがあるように、歯科でも予約外では診療できない場合がどうしても出てきてしまうのです。

歯科が予約制であるメリット

こうした事情から、歯科医院の予約制は多くの患者さんをお待たせすることなく、円滑に拝見するために有効な手段と考えられ、普及してきました。
以下、予約制が患者さんのメリットとなる理由を挙げておきましょう。

①患者さんをお待たせしない。
②消毒や診療の準備を十分にとり、診療を円滑に進めることができる。
③精度のよい歯のかぶせ物や入れ歯(技工物)を製作するためには時間が必要。
④診療中、患者さんが長時間お口を開けていることが避けられる。
⑤治り具合を確認したり、お薬が効く時間を待ったりするなど、計画的な治療を提供できる。

中編では、これら6項目について、予約制が患者さんのメリットとなる理由を詳しく説明していきます。

【中編に続く】

■引用文献
歯科医院のトリセツ 笠間慎太郎・著 医歯薬出版株式会社
歯科六法コンメンタール(第2版) 社会歯科学会

神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会 会員
いとう歯科クリニック 伊東 聡

 

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