おにぎりのルーツと「噛む力」

おにぎりのルーツと「噛む力」

執筆者
神奈川県歯科医師会会員・鎌倉市歯科医師会会員 守田誠吾

仕事や家事で忙しいときも、遠足やピクニックなど外で食事をするときも、手軽に食べられるおにぎり。コンビニにもさまざまな種類が並ぶ、身近な食べ物です。そんなおにぎりには長い歴史があり、呼び名にもさまざまな由来が伝わっています。おにぎりの話をたどりながら、毎日の食事で大切にしたい「よく噛むこと」について考えてみましょう。

 

■昔のおにぎりは便利な携帯食

おにぎりの歴史は古く、奈良時代初期の『常陸国風土記』には「握飯(にぎりいい)」という言葉がみられます。

 

鎌倉時代の承久の乱では、北条政子が東国(鎌倉幕府側)の武士たちに、梅干し入りのおにぎりを配り、それをきっかけに梅干しが全国へ広まったとも伝えられています。鎌倉武士にとって、茶碗や箸を使わずに手で食べられるおにぎりは、保存も利く便利な携帯食として重宝されたのでしょう。さらに江戸時代には、浅草海苔の養殖が始まり、定番の海苔巻きおにぎりが誕生しました。

 

ただ、当時の米は今のように柔らかくはなく、しっかり噛まなければ飲み込むことができなかったようです。そのため自然と「噛む力」が鍛えられていたのです。しっかり噛むことは唾液の分泌を促し、むし歯予防や消化の助けになります。また、ゆっくりよく噛んで食べると満腹感を得やすくなり、食べすぎを防ぐことにもつながります。食べ物が貴重だった時代には、理にかなった食べ方といえるでしょう。

 

■「おにぎり」と「おむすび」の呼び名の由来

「おにぎり」と「おむすび」は、同じ食べ物なのに、どうして呼び方が違うのでしょうか。

 

「おにぎり」は、ご飯を手で握ることに由来する呼び名と考えられています。一方、「おむすび」は古語の「産す(むす)」=生み出す・結ぶ、に由来するという説があります。神話に登場する「産霊(むすひ)」は、生命を生み出す神の力を表す言葉です。こうした言葉とのつながりから、おむすびに縁起のよさや自然への感謝を重ねる見方もあります。

 

また、関東では「おにぎり」、関西では「おむすび」という呼び方が多いともいわれます。「おにぎり」は素朴で力強い響きがあり、東国武士文化が根づいた関東で定着したと言われています。一方の「おむすび」はやわらかく上品な印象があり、京都文化の影響を受けた西日本で好まれたようです。また、三角形は山を表し、山の神様への感謝が込められている、という説もあります。

 

どちらの呼び名でも、おにぎり(おむすび)は、人の手でむすばれた温かい食べ物です。一口かじりついた瞬間に、作ってくれた人のぬくもりを感じ、感謝の気持ちを思い出すことができるでしょう。そして、おにぎりを頬ばるときには、先人たちがしっかり噛んで食べていたことを思い出してみてください。いつもの一口をゆっくりとよく噛むだけで「噛む力」を育てる一歩になります。その小さな一歩が、お口の健康につながるはずです。

 

■噛みにくさはお口からのサイン

「噛む力」を育むことは健康な歯を守り、暮らしの質を高める大切な習慣です。もし「以前より噛みにくい」「食事がとりにくい」と感じたら、お口に何かトラブルが起きているサインかもしれません。最近では、むし歯や歯周病のほか、噛みにくさ・飲み込みにくさ・食事中のむせなど、お口の機能に小さな衰えがみられる「オーラルフレイル」が注目されています。気になること、不安なことがあれば、かかりつけの歯科医院に相談しましょう。

鎌倉市歯科医師会会員 守田歯科医院 守田誠吾

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守田誠吾
神奈川県歯科医師会会員・鎌倉市歯科医師会会員
守田歯科医院

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