インプラントを迷われている皆さんへ ~医療費控除が受けられるのをご存じですか?~
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2023/02/17
- 歯とお口の基礎知識
医療費の一部が還付金として戻ってくる
このサイトでもたびたびご紹介している通り、インプラント治療にはさまざまなメリットがあります。
一方、お口のなかや歯、あごの骨などを傷つけたり、感染症がおきたりといった合併症のリスクもないとはいえません。
インプラント治療のメリットを受け、デメリットを避けるためには、まず事前に担当医と十分なインフォームド・コンセント(説明と同意)をおこなうことが大切です。
熟練した歯科医師が、術前検査で患者さんの歯やあごの骨の状態などを見きわめ、十分に準備したうえで適切な治療をおこなえば、期待通りのメリットを受けることができるでしょう。
ただし、インプラント治療は保険適用外の治療であり、術前診査や手術などが公的医療保険の対象外の自由診療となるため、1本の歯につき30万~50万円という高額な治療費がかかるという問題もあります。
インプラント治療を受けたいと思っても、高額な治療費に悩んで、二の足を踏む方々が多いのもこのためでしょう。
このように公的医療保険の対象とならないインプラント治療ですが、実は医療費控除が適用され、税金から医療費の一部が還付されることをご存じでしょうか。
1年間の医療費が10万円以上であれば対象に
そもそも医療費控除とは、納税者がその年の1月1日から12月31日までの1年間にご自身または生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合、その額と総所得金額をもとに計算された額の所得控除が受けられるという制度です。
医療費控除を受けるためのもう1つの条件は、支払った医療費の合計が「10万円」または「総所得金額の5%」を超えることです。
総所得金額が200万円未満の場合、総所得金額の5%を超えた額ということになります。
総所得金額というのは、サラリーマンでほかに収入がない場合、源泉徴収票の「給与所得控除の金額」という欄に記載された額のことを指します。
医療費控除額は、総所得金額と1年間にかかった医療費の額により、次のように計算されます(図1)。
図1 医療費から保険金、10万円などを引いた額が医療費控除額
納税者がご自身や生計を一にする配偶者、親族のために1年間に支払った医療費の総額-生命保険会社から受けた保険金の受給額―10万円または総所得金額の5%=医療費控除額(最高200万円)。
このように計算した医療費控除額に所得税率をかけた金額が還付金額、つまり戻ってくるお金ということになるわけです(図2)。
図2 医療費医療費控除額×所得税率=還付金額
インプラント治療費が30万円なら4万円戻ってくる
ここでは、年収(総所得金額)400万円でインプラント治療費を含む1年間の医療費が30万円であった方の場合を例にとり、医療費控除によって受けられる還付金を計算してみましょう。
加入されている生命保険によっては、インプラント治療に対して保険金が支払われることがあります。
このような保険金を受給していない場合、次の計算により医療費控除額は20万円となります。
30万円(1年間の医療費)-0円(保険金などの受給額)-10万円=20万円(医療費控除額)
つまりは、この医療費控除額20万円に年収400万円の人の所得税率20%をかけた4万円が戻ってくるということになります。
しかし、インプラント治療費30万円から保険金を引き、さらに10万円を引いた額が10万円以下であれば医療費控除の対象外ということになります。
インプラント費用30万円-生命保険会社からの保険金25万円=5万円(医療費控除の対象外)
これに対し、インプラント治療費30万円から保険金を引き、さらに10万円を引いた額が10万円以上であれば医療費控除の対象となります。
インプラント費用30万円-生命保険会社からの保険金5万円-10万円=15万円(医療費控除の対象)
総所得金額400万円の方の場合、15万円に20%をかけた3万円が還付金となって戻ってくる計算になるわけです。
ここで注意しておきたいことは、医療費控除の対象となるのは納税者ご本人だけでなく、生計を一にする配偶者、親族のために1年間に支払った医療費の総額であるということです。
つまり、医療費控除の対象は、納税者が1年間に支払ったご本人と配偶者、親族の治療費の合計なのです。
また、「1年間に支払った医療費の総額」には、通院のために使った公共交通機関の交通費も含まれますので、かんたんに医療費控除の対象外と諦めずに計算し直してみてください。
さらに、過去5年間であれば、税務署に申請することで医療費控除を受けることができます。
医療費控除は、公的医療保険の対象とならないインプラント治療に対しても還付金を手にすることができる制度です。
くわしくは国税庁のホームページをご覧になり、ぜひご活用ください。
国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/a/03/order3/3-3_18.htm
神奈川県歯科医師会・横浜市歯科医師会会員
かわたき歯科クリニック 川滝統一