歯周病と喫煙

昨今、禁煙の流れが進んでいます。飲食店などでも禁煙のお店が増えてきています。これは喫煙が人間の体に及ぼす発ガン性などの悪影響と、喫煙により出る煙による受動喫煙という問題があるからだと考えられます。
そして喫煙はお口の中にも様々な影響を及ぼすことがわかっており、歯周病と密接な関係があることがわかっています。ある研究では喫煙者と非喫煙者を比較すると、喫煙者は2〜8倍、歯周病になりやすいと報告されています。歯周病はギネスブックに世界で一番かかっている人が多い病気として登録されており、歯を抜く原因1位という病気にも関わらず、ある程度進行しないと症状が出にくく、気付いたら重症化しているケースもある大変恐ろしい病気です。今回は、喫煙と歯周病の関係についてお話ししたいと思います。

喫煙率

たばこ産業の「2018年全国たばこ喫煙者率調査」によると、成人男性の平均喫煙率は27.8%、成人女性は8.7%でした。20年前のデータでは、成人男性55.2%、成人女性は13.3%であり、データ上で喫煙者数は徐々に減少しておりますが、先進諸国と比較すると依然高い値を示しています。

タバコの害

タバコの煙の中には数千種類もの化学物質が含まれています。その中の有害物質は約200種類、そして発がん物質は約70種類と言われています。この有害物質で代表的なものは、①ニコチン ②一酸化炭素 ③タールなどです。

ニコチン ニコチンは非常に依存性の高い薬物です。驚くべきことにヘロインやコカインなどの麻薬より依存度は高いとされ、禁断症状も強く現れるといわれています。強い血管収縮作用(血管を細くしてしまう)があり、脳や皮膚、そして歯肉の血流を障害してしまいます。
一酸化炭素 一酸化炭素は酸素と比較して200倍以上血液中のヘモグロビンと結合しやすいです。酸素と結合するはずのヘモグロビンが一酸化炭素と結合してしまうため、血液の酸素運搬能が低下してしまい、体の組織の酸素欠乏が起こってしまいます。したがって酸素が必要な細胞の活動が低下してしまいます。
タール タールとは、ヤニのようなものを指します。タバコの煙からガス成分を除くものです。タールの中には有害物質や発がん性物質が多く含まれています。


喫煙による歯周組織への影響

これまでの述べてきましが、タバコの煙は体に悪影響を及ぼします。そして歯周組織(歯の周りにある組織)への悪影響も認められています。
タバコの煙を吸うと歯肉上皮内の血管収縮により末梢循環血流量が低下します。そして一酸化炭素の影響により酸素飽和度の低下が起きます。これが長期間続くと、歯肉が炎症を起こしている場合、通常は歯肉からの出血が見られますが、喫煙者では歯肉が貧血状態になっているため出血しにくい歯茎になっていきます。また歯肉の色もメラニン色素の沈着により黒ずんできますし、歯の表面についたタールの影響により、歯の着色と、タールから有害物質などが持続的に歯肉に悪影響を与えます。そして歯周病の主な原因となる細菌プラークが歯肉に影響を与えた上で、タバコの煙による影響を受けると、プラークの付着量や歯石量と比較して、歯周病の重症度が上がっていることも多く認められます。
あるデータによると、喫煙者は非喫煙者に比べて2-8倍、歯周病になりやすいと報告さ
れています。また、一日10本以上喫煙すると歯周病になってしまうリスクが5.4倍、10年吸っていると4.3倍にもなってしまうという報告もあります。

歯周治療に対する影響

喫煙により歯肉の血管収縮、そして酸素飽和度の低下等により歯肉は貧血状態になります。そして、歯肉の創傷治癒の低下(傷が治りにくい状態)が起こっています。そのため、スケーリング・ルートプレーニングなどの歯周病の治療に対する歯肉組織の治癒反応の低下につながります。そして歯周外科治療や歯周組織再生療法に関しても、組織の治癒反応の低下が起こっているため、非喫煙者と同等の良好な結果は得られないことが示されています。
歯周治療だけに限らず、インプラント治療に関しても治療の予後に対する悪影響が認められています。ヘビースモーカーではさらに顕著に認められると言われています。

禁煙の効果

喫煙者に見られる歯肉の反応は、禁煙することによって歯肉の血流量は2週間で回復するとの報告があります。そして歯周治療の効果も、禁煙者では治療の反応性の改善が認められること、歯周組織の状態が早期に回復することも報告されています。

まとめ

今回は喫煙と歯周病の関係性についてお話しさせて頂きました。喫煙とガンの関係や、喫煙が種々の病気に関与していることはみなさんご存知かと思いますが、実はタバコが一番最初に触れる、歯肉及び口腔粘膜にも悪影響を及ぼすことを知らなかった方も多いのではないでしょうか。喫煙をされている患者さんに歯周病の治療が必要になった場合、治療に対する組織の反応が鈍く、治療がうまく進まない経験を何度も経験しています。全身的な影響を考えても、是非禁煙されることをおすすめします。
また、喫煙者の方は自覚症状が無くても、歯周炎が進行している可能性があります。是非一度かかりつけの歯科医院にて歯周病の検査をしてみてはいかがでしょうか。

神奈川県歯科医師会・川崎市歯科医師会会員 村野嘉則

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