日本はお口のケアの後進国!?
- 執筆者
- 神奈川県歯科医師会・大和綾瀬歯科医師会会員 岡田 誠二
- 2024/03/27
- 歯とお口の基礎知識
年間投資額はわずか3,000円未満
少し前のことですが、「日本はお口のケア(オーラルケア)の後進国」と認めざるを得ないデータが発表されました1)。
これは、パナソニック株式会社が2021年6月、アメリカ、ドイツ、日本の20~69歳の各国100人ずつ合計300人を対象に、国別のオーラルケアへの意識について調査した結果、明らかにされたものです。
この結果は大きな驚きであるとともに、、私たち歯科医師にとって恥ずべきことだと感じました。
なぜなら、日本の歯科医療は世界トップレベルといわれており、私自身、歯学部の学生だった頃にはそのように教育されてきたからです。
日本人のオーラルケア意識が低いことが浮き彫りに
まず驚いたのは、日本人のオーラルケアに使う金額がこれら3ヵ国中で最下位だったことです(図1)。
オーラルケアへの年間投資額として最も多い価格帯は、ドイツでは「10,000円以上~15,000円未満」、アメリカでは「5,000円以上~10,000円未満」であったのに対し、日本では「3,000円未満」でした。
また、口臭について「とても自信がある」「やや自信がある」と回答した人が、日本では19.0%であったのに対し、アメリカは68.0%、ドイツは79.0%と大きな差がついています(図2)。
さらに、初対面の人と会うときによく見る相手のポイントとして「歯(歯並びや色)」を挙げている人の割合は、ドイツでは1位、アメリカでは2位であったのに対し、日本では5位という結果でした。
つまり、日本人は歯が第一印象を左右するものであるという意識が低いことが明らかになっています。
それだけでなく、普段からご自身の歯並びや歯の白さを意識し、予防や対策に努めている方々も、日本はアメリカ、ドイツに比べきわめて少ないという結果でした(図3・4)。
これでは、日本が「オーラルケア後進国」という不名誉なレッテルを貼られてもしかたがないと思います。
(図1)
プレスリリース発行元:パナソニック株式会社
(図2)
リリース発行元:パナソニック株式会社
(図3)
リリース発行元:パナソニック株式会社
(図4)
リリース発行元:パナソニック株式会社
お口のケアに対する意識を高めて「オーラルケア先進国」へ
仮に、オーラルケアに対する1年間の投資額を3,000円とした場合、どのような実態が想像できるでしょうか。
小売物価統計調査によると、歯ブラシ1本の平均価格は110円となっています2)。歯ブラシの交換時期として企業が推奨するのは1ヵ月ですので、1年に12本使うと1,320円になります。同様の調査で歯みがき剤は1つ154円ですので、年に3本使うとして462円。
歯間ブラシは30本セットで1,080円ですが、1本の寿命は1週間くらいですので1年52週使うとして2,160円になります。
トータルすれば3,942円となり、この時点ですでに3,000円を大きく上回ってしまうことになるわけです。当然のことながら、これでは諸外国で使用頻度の高い電動歯ブラシやフロスなどの費用はまかなえません。
また、各国別の1人あたり年間歯ブラシ消費量を調べた結果をみると、ドイツは20本、韓国は8本であるのに対し、日本は3.5本でした。
改めていうまでもなく、歯と口は健康の入り口です。生涯にわたって心身の健康を維持・向上させるためにも、日本人はもっとオーラルケアに意識を向けてもらいたいと思います。
私たち歯科医師も、「日本の歯科医療は世界トップレベル」という誇りを胸に、このような不名誉な実態を脱して「オーラルケア先進国」といわれるよう努めていかなくてはいけないと痛感しています。
■参考文献
1)日刊工業新聞 2012年7月20日「日本・アメリカ・ドイツのオーラルケア事情を徹底調査」
https://www.nikkan.co.jp/releases/view/125384
2)小売物価統計調査による価格推移/日本の物価
https://jpmarket-conditions.com/9611/
- 執筆者情報
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岡田 誠二神奈川県歯科医師会・大和綾瀬歯科医師会会員
セントルカ眼科歯科クリニック