歯の根っこの治療はなぜ長びくの??

執筆者
神奈川県歯科医師会会員・横浜市歯科医師会会員 伊東 聡

むし歯ができたとき、「歯の根っこの治療」をされた経験をおもちの方々も多いことと思います。
歯科医から「歯の根っこの消毒をしましょう」などといわれて応ずると、歯の根もとに少しだけ処置されて「1週間後にまた消毒しましょう」と告げられる治療です。
患者さんにしてみれば「何をされているのかわからない」「痛くもないのに何回も通わされる」「長いときには半年以上もかかる」といった不満から、歯科治療に対する不信感につながりかねないのではないかと心配になります。
そこで、今回は歯の根っこ(歯根)の治療について、Q&A形式でご説明します。

 

Q.そもそも歯根治療は何を治す治療なの?

A.歯根治療はむし歯の治療の1つで、歯のなかにある神経や血管がむし歯菌によって炎症を起こし、それがあごの骨に伝わって広がった状態を治す目的で行われます。

こうした状態を放っておくと、痛みがひどくなって歯を失うことにつながります。歯根治療は、歯を失わないようにするための大切な治療の1つといえます。

 

Q.どんな症状があるの?

A.歯根の炎症には、急性炎症と慢性炎症があります。

急性炎症では、冷たい水や熱い湯を口に含んだときの刺激による痛み、自発的な激しい痛み、噛んだときの痛みや腫れなどが生じます。痛みの原因は、神経が傷ついたり、膿が骨を圧迫したりすることが考えられます。

一方、慢性炎症では同じようなことがゆっくり進行するため、ひどくなるまで無症状だったり、レントゲンなどで見つかったりすることも少なくありません、また、歯ぐきにニキビのようなものができることもあります。

 

Q.歯根の治療の流れは?

A.歯根の治療は、むし歯菌が歯の内部に広がって、神経が壊死したり、骨に膿がたまったりした状態を改善する目的で行います。治療の流れは次の通りです。

1.むし歯部分の除去 むし歯菌に感染している部分を歯や神経、血管を含め専用の器具で徹底的に除去します。

2.洗浄・消毒 空洞になった根管内を薬剤で洗浄して清潔にします。

3.根管内の乾燥と充填 根管内を乾燥させ、ゴムのような薬剤を詰めて密封します。

4.土台の築造 むし歯を治療した部分を金属やグラスファイバー、レジンなどを使って補強します。

5.型どり かぶせ物をつくる場合、型どりをすることもあります。

6.かぶせ物の装着 つくったかぶせ物を装着します。

 

Q.歯根治療が長引く理由は?

A.歯根治療が長期にわたるのは、次のような事情があります。

  • 菌を完全に除去するまで時間がかかる

歯の内側の奥のほうに感染が広がっていたり、感染を長期間放置したりした場合、むし歯菌を完全に除去させるには洗浄・消毒を何度も繰り返す必要があります。
洗浄・消毒は1回あたり5~10分で終了しますので、患者んが「痛みもないのになぜこんなに長期間、何回も治療するのか」と疑問や不満を抱かれるのも無理からぬことだと思います。
しかし、痛みがないからといってむし歯菌がいなくなったわけではありません。むし歯菌を完全に死滅させなければ、いずれ再発しますので洗浄・消毒の工程はきわめて大切です。

  • 歯根のかたちが複雑で清掃自体が難しい

歯根は1本ではなく2〜4本に枝分かれし、それぞれがまっすぐ歯ぐきに埋まっているわけではありません。このため、患者さんの歯根のかたちによっては治療が煩雑となり、時間がかかることがあります。
患者さんがお口を開けていられる時間はせいぜい20〜30分ですので、長い時間がかかる場合は何回かに分けて治療します。

  • 炎症や膿がひどいとき

歯根に膿や炎症の袋がある場合、すぐに先の工程に進むと痛みの再発が出る場合があります。そのため、しばらく薬で炎症が治るのを待つ場合があります。

  • 再発治療の場合

再発治療の場合、古い薬を除去してから、改めて洗浄・消毒する必要があります。以前の治療で根が細くなっている、閉じているなど予想外の変化も多く、治療に時間がかかります。

  • 全身疾患がある

歯の痛みや歯ぐきの腫れがなかなか引かない場合、ほかの病気などを併発していることが少なくありません。こうした場合、随伴する病気の治療状況により、追加治療や経過観察が必要な場合があります。

最後まで根気よく治療を続けてください

歯の根の治療は、これまで述べた理由により長期にわたって何回も行なう必要があります。
特に慢性炎症の場合、何年もかけてできることが多く、数回の治療では治癒しにくいものです。いずれにせよ、途中で治療を中断してしまうと状況はさらに悪化し、治療期間もさらにかかることになります。
こうしたことをご理解の上、最後まで根気よく治療を続けていただければ幸いです。

執筆者情報
伊東 聡
神奈川県歯科医師会会員・横浜市歯科医師会会員
いとう歯科クリニック

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