矯正治療を行うと顎関節症になるというのは本当ですか?

執筆者
神奈川県歯科医師会会員 川崎市歯科医師会会員 松原 望

矯正治療を行うと必ず顎関節症になる、というのは誤解です

多くの研究で、矯正治療が直接的に顎関節症を引き起こすという確固たる証拠はないとされています。むしろ、歯並びやかみ合わせの改善によって、顎関節への負担が軽減され、顎関節症の症状が改善するケースも多く見られますが、これは矯正治療後のことです。

以下のような関係性は充分に考えられます

  • 一時的な症状の出現: 矯正治療中は、歯が動くことによって一時的にかみ合わせが変化するため、顎関節に違和感や症状が出ることがあります。一時的なもので治療が進むにつれて改善されることが多いです。
  • 既存の顎関節症の症状悪化: もともと顎関節症の症状がある人が矯正治療を受けると、歯の移動によって悪化する可能性があります。
  • 顎関節症の多因子性: 顎関節症は、歯ぎしりや食いしばり、ストレス、生活習慣(頬杖、うつ伏せ寝など)、外傷など、様々な要因が絡み合って発症します。そのため、矯正治療自体はストレスフルなものなので、仕事や学校のストレスなどが複合して顎関節症の症状が発症することがあります。
  • 不適切な矯正治療: 適切でない矯正治療方法(治療方針や装置)で顎関節症を引き起こすケースがあります。

 

重要なポイントは以下の通りです。

  • 精密な診断と治療計画: 矯正治療を開始する前に、かみ合わせと顎関節の状態を詳しく診断し、顎関節症のリスクがある場合は、それらを考慮に入れた治療計画を立てることが非常に重要です。
  • 顎関節に詳しい矯正歯科医との連携: 矯正治療中に顎関節に異変を感じた場合は、まずは担当の矯正歯科医に相談しましょう。症状に応じて、治療計画の調整や、顎関節症の専門医との連携が必要となる場合もあります。矯正治療中の顎関節症状に対しては適切な対応をとることで、症状を緩和できます。
  • 顎関節症の治療を矯正治療前に行う:もともと顎関節に問題がある患者さんの場合には矯正治療前に顎関節症の治療を行うのがベストです。「歯並びかみ合わせの矯正治療」と「顎関節症の治療」は「全く別の治療」と分けて考えていただければよいでしょう。矯正治療中に顎関節症が生じた場合には矯正治療と並行(休止)して顎関節症の治療を行います。

 

結論

矯正治療は顎関節症の直接的な原因とは言えませんが、治療中に一時的な症状が出たり、元々ある症状が悪化したりする可能性はあります。そのため、信頼できる矯正歯科医のもとで、十分な検査とカウンセリングを受け、慎重に治療を進めることが大切です。

参考文献
 Impact of orthodontic treatment on temporomandibular disorder – a systematic Review Kurt, H. et al. Int J Dent Med Sci Res 2015 Apr1

Temporomandibular disorders and orthodontics: What have we learned from 1992-2022 Al-Nimri, A. et al. Am J Orthod and Dentofacial Orthop 2022 June

 

執筆者情報
松原 望
神奈川県歯科医師会会員 川崎市歯科医師会会員
かわさきノエル矯正歯科

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