「麻酔の注射がイヤ!」とおっしゃる皆さんに、お伝えしたいこと

執筆者
神奈川県歯科医師会・鎌倉市歯科医師会 原 宣道

歯医者が嫌いという皆さんに理由を尋ねると、「麻酔の注射がイヤ!」とおっしゃる方が多いようです。
歯科治療は、いうまでなく子どもからお年寄りまで、あらゆる年齢層の方々に対して行われるものです。患者さんのなかには、基礎疾患をおもちの方々も少なくありません。
私たち歯科医は、このような患者さんに対し、有効かつ安全で苦痛の少ない歯科治療を提供できるよう、さまざまな工夫をしています。
歯科麻酔は、こうした歯科医療を行う上で重要な手段の1つです。

 

歯科で主に使用される局所麻酔について

歯科で用いられる麻酔法には、全身麻酔と局所麻酔があります。
全身麻酔は、大がかりな口腔外科手術を受ける患者さん、あるいは歯科治療に協力が得られにくいお子さんや障がいをおもちの方々に対し、大学病院などの専門施設で行われます。
一方、局所麻酔は歯科医院で日常的に行われるむし歯などの治療の際、局所麻酔薬を口内に注射する方法です。
歯科で使われる局所麻酔薬の多くには、アドレナリンが添加されています。アドレナリンは、注射部位の血管を収縮させることで薬剤をとどまりやすくし、麻酔効果を高める効果が期待されます。
その一方で血圧上昇や頻脈、動悸といった症状が現れることがありますので、高血圧や心臓疾患などの持病をおもちの方は治療前にお申し出ください。
また、「局所麻酔薬を注射したあと急に気分が悪くなった」という経験をされた方もおられるかもしれません。その原因は、主に過剰な緊張や痛みがもたらす「血管迷走神経反射」という反応です。
交感神経が緊張して血圧上昇や頻脈、動悸、頻脈などを起こしたあと、身体はこうした状態を正常に戻そうと副交感神経がはたらきます。この副交感神経のはたらきが過剰になると、今度は血圧と脈拍が急速に低下し、急に血の気が引くような感覚や発汗、吐気などが起こるのです。
こうした症状のほとんどは、しばらく安静にしていれば治まります。

 

塗り薬の麻酔薬と精神鎮静法

近年は、外用局所麻酔薬と呼ばれる塗り薬を口内の粘膜表面に塗布して感覚を麻痺させたあと、極細の注射針を使用してゆっくりと注射をすることで治療時の痛みを軽減することができるようになりました。
それでもなお、歯科治療に強い恐怖心のある方や、治療器具が口の中に入るだけで吐気をもよおすという、嘔吐反射の強い方などには「精神鎮静法」という麻酔法が勧められます。
これは、リラックス効果のある麻酔ガスを鼻から吸入したり、鎮静薬を点滴注射したりする麻酔法です。
患者さんの意識を完全に失わせる全身麻酔とは異なり、意識を保ったまま中枢神経系の機能を適度に抑制することで不安感や恐怖心が軽減され、リラックスした状態で治療が受けられます。
ただし、鎮痛効果はほとんどありませんので、通常は局所麻酔と併用されます。
とはいえ、現在の歯科治療は「歯医者が嫌い」とおっしゃる皆さんが想像されるほど痛くはありませんので、なるべくリラックスして治療に臨まれることが何よりも大切です。
誰にとっても麻酔の注射はイヤなものです。しかし、快適に治療を進めるためにはときとして不可欠です。もし、麻酔に対する不安から歯科受診をためらっているとすれば、まずは歯科医とよく相談してみてください。

 

 

原歯科医院院長 鎌倉市歯科医師会 原 宣道

 

執筆者情報
原 宣道
神奈川県歯科医師会・鎌倉市歯科医師会
原歯科医院

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