入れ歯を使いたくないという方へ

保険適応外の選択肢

神奈川県歯科医師会に、こんなご相談が寄せられました。
「歯が左右4本抜け、歯医者さんに入れ歯を勧められました。入れ歯は違和感があったり、食事や会話の途中に外れてしまったり、見た目が悪かったりするイメージがあります。できれば避けたいのですが、ほかに方法はありますか」

当会に所属する歯科医師がこうした声にお応えし、健康保険が使える義歯、保険適応外の新しい義歯、インプラント、それぞれのメリット、デメリットをご紹介します。

保険がきく入れ歯のデメリット

むし歯や歯周病、外傷などで歯を失った場合には、再びしっかり噛めるようにしたり、見栄えを回復したりするため、人工の材料を使ってつくった入れ歯(義歯)などで欠損した歯の機能を補う必要があります。
ご相談いただいた方の失われた歯が、連続する4本なのか、とびとびに欠損した4本なのか、どの部位の歯が4本欠損したのかによって対処法は異なってきますので、ここでは実際によくあるケースに即してご説明します。

連続しないではない歯を欠損した場合、通常はブリッジ治療が行われます。これは欠損した歯の両隣の健全な歯を削って橋げたとして利用し、文字通り橋を架けるようにして人工の歯を補う治療です。
しかし、ブリッジ治療は欠損した歯の両隣の歯が健全でなければ強度が不足し、長年にわたってしっかり噛むことができないといった理由から、実際には施術できないことも多いのです。
こうした場合は、やはり義歯を選択せざるを得ません。とはいえ、ご指摘のように健康保険が使える義歯には外れやすかったり、義歯を支える金属製のバネ(クラスプ)が周囲から見えてしまったりするという欠点があります。このような理由から健康保険が使える義歯を避けたいとおっしゃる方には、保険適応外の義歯をお勧めしています。

金属製のバネを使わずに装着できる新しい義歯

最近、「ノンクラスプデンブチャー」と呼ばれる新しい義歯が開発され、普及しつつあります(図)。
これは、従来の義歯のように金属製のバネを使用せずに装着でき、見た目も自然で周囲から義歯を使っていることを悟られません。義歯本体の歯肉の部分(床)も比較的軟らかい材料でつくられているため、従来の義歯よりフィット感に優れるという利点があります。ノンクラスプデンチャーは、欠損部が連続ではなくとびとびの状態でも有効で見栄えもよいため、前歯が欠損している患者さんに適しています。
保険適応外のため、治療費は5~20万円です。

図 金属のバネ(スクラプ)を使わずに装着できるノンクラスプデンブチャー

歯科医師と十分に相談して最適の治療法を選択

しかしながら、ノンクラスプデンチャーも義歯は義歯であり、従来の義歯より異物感が少ないとはいえ、毎日、起床時と就寝時に脱着を繰り返さないといけないことには変わりありません。このため、入れ歯を使うわずらわしさや心理的な抵抗感をもたれる方々も少なからずおられます。そのような方々には、インプラント治療をお勧めします。

インプラント治療は、あごの骨にチタン製の土台(フィクスチャー)を埋め込み、数ヵ月後にあごの骨にしっかりくっついたこと(癒合:インテグレーション)を確認したあと、その上に人工の歯を作成していく方法です。インテグレーションが完成すれば、自分の歯とほぼ同じ感覚で噛めますし、着脱のわずらわしさもありません。見栄えもよいため前歯、奥歯など部位を問わずに施術できます。患者さんのあごの骨の状態によってはインテグレーションの完成が期待できず義⻭を選択せざるを得ないこともあります。

歯を失われた方々は、かかりつけの歯科医師と十分相談され、さまざまな選択肢のなかからご自分にもっともふさわしい治療法を選択していただきたいと思います。

■参考文献
1)谷田部 優 ノンメタルクラスプデンチャー 長く使える設計の原則からメインテナンスまで クインテッセンス出版 2015
2)U.Belser ら ITI Treatment Guide 審美領域におけるインプラント治療 クインテッセンス出版 2007

神奈川県歯科医師会・相模原市歯科医師会会員 古川信也
医療法人社団 健やか家族 ふるかわ歯科クリニック

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