口臭の原因と治療法

自身の口臭で他者を不快にさせているかもしれません。

臭いには、他者の記憶には残りやすいが自身では慣れてしまいやすいという特徴があります。
その最たるものが口臭です。
しかも口臭は、悪臭を放っている当の本人は気付きにくいため、無自覚のうちに他人に不快を強いて、自身の信頼すら奪いかねません。

口臭の有無を知る方法

実際に、口臭はほぼ全ての人にあります。健康な人でも、起床時、空腹時、緊張時などに強くなり、飲食によって消失する「生理的口臭」があります。一方、飲食によって消失せず、その病的原因を除去しない限り消失しない「病的口臭」は、およそ3人に1人の割合であることが報告されています1
自身に病的口臭があるかないかは、専用の測定器を持つ歯科医院で調べることができます。

病的口臭の原因は口の中にあります。

一般に、病的口臭の原因は胃腸にあると思われがちですが、これは誤った認識です。
胃の入り口は噴門(ふんもん)と呼ばれる筋肉で強く閉じられているため、臭いが胃から口へと上ってくることはほとんどありません。
病的口臭の原因の90%以上は、実は、口の中にあります2
そして、その悪臭の正体は、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド等の「硫黄化合物」と呼ばれる揮発性ガスです3,4

悪臭の正体である硫黄化合物は歯周病細菌がつくっています。

悪臭の正体である硫黄化合物は、歯周病の原因となる細菌がつくっています5
つまり、病的口臭の原因は、「歯周病」ということが言えます6
歯周病細菌は、歯と歯茎間にある溝に潜んでいますが、歯周病が進行するとお口の中全体に広がります。

病的口臭の強さと歯周病の進行との関係

舌の表面が白っぽくなっていることがあります。
これは「舌苔(ぜったい)」と言い、食物や細菌の老廃物が堆積したものです。
歯周病が進行すると、歯周病細菌はこの舌苔にも移行し増殖するので、舌苔からも悪臭を放つようになり、病的口臭はさらに強くなります7
このように、病的口臭の強さと歯周病の進行とは相関していることが知られています2,8,9,10
口臭は歯周病進行のサインでもあります。

病的口臭の治療法

これまでのことから、病的口臭を治すためには歯周病治療が有効であることがわかります11
大部分の病的口臭は、歯と歯茎の間にある溝の中に潜む歯周病細菌を専用の器具で丁寧に取り除き、歯周病細菌が再びそこで増殖し辛くなるよう歯の根の表面を磨き上げる、歯周病治療によって治ります。
もちろん、歯科医院で正しい歯磨きの指導を受け、ご自身で管理することも大切です。
そして、これらの歯周病治療には健康保険が適用されますので、歯科医院で相談され、さわやかな息を取り戻していただきたいと思います。

参考文献

1. Silva MF, Leite FRM, Ferreira LB, Pola NM, Scannapieco FA, Demarco FF and Nascimento GG. Estimated prevalence of halitosis: a systematic review and meta-regression analysis.
Clin Oral Investig. 2018 Jan;22(1):47-55.
2. 川口陽子ほか編、「息さわやか」の科学、明治書院、2009年
3. Tonzetich, J. & Richter, V. J. Evaluation of volatile odoriferous components of saliva. Archives of Oral Biology 1964;9, 39–45.
4. Tonzetich, J. Direct gas chromatographic analysis of sulphur compounds in mouth air in man. Archives of Oral Biology 1971; 16, 587–597.
5. Awano S, Gohara K, Kurihara E, Ansai T and Takehara T. The relationship between the presence of periodontopathogenic bacteria in saliva and halitosis. Int Dent J. 2002;52(suppl 3):212‐6.
6. Morita M and Wang HL. Association between oral malodor and adult periodontitis: a review. J Clin Periodontol. 2001 Sep;28(9):813-9.
7. Van Winkelhoff, A. J., van der Velden, U., Winkel, E. G. & De Graaff, J.
Black-pigmented Bacteroides and motile organisms on oral mucosal surfaces in individuals with and without periodontal breakdown. Journal of Periodontal Research. 1986; 21, 434–439.
8. Yaegaki, K. & Sanada, K. Volatile sulfur compounds in mouth air from clinically healthy subjects and patients with periodontal disease. Journal of Periodontal Research. 1992; 27, 233–238.
9. Yaegaki, K. & Sanada, K. Biochemical and clinical factors influencing oral malodor in periodontal patients. Journal of Periodontology. 1992; 63, 783–789.
10. Miyazaki, H., Sakao, S., Katoh, Y. & Takehara, T. Correlation between volatile sulphur compounds and certain oral health measurements in the general population. Journal of Periodontology. 1995; 66, 679– 684.
11. Deutscher H, Derman S, Barbe AG, Seemann R and Noack MJ. The effect of professional tooth cleaning or non-surgical periodontal therapy on oral halitosis in patients with periodontal diseases. A systematic review. Int J Dent Hyg. 2018 Feb;16(1):36-47.
12. Kleinberg, I. & Westbay, G. Oral Malodor. Critical Reviews in Oral Biology & Medicine 1990; 1, 247–259.

神奈川県歯科医師会・秦野伊勢原歯科医師会会員
ハート歯科 添田博充

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

もくじ