浅草寺境内の楊枝店
 天保5年(1934年)に発刊された長谷川雪丹作『江戸名所図会』には、浅草寺境内に多くの楊枝店が多く軒を並べて、美人の看板娘を置いて房楊枝や歯磨粉を売っている図が描かれている。浅草寺の近くには、吉原遊廓があったためいなせな男性は歯が白いことを自慢にしていた。浮世絵師の春信、英泉、豊国等は、楊枝店の看板娘を描いており、とくに有名なのは楊枝店のお藤である。谷中笠森稲荷の水茶屋、お仙と並び称され美人の一人と言われた。日本橋にある「さる屋」は、江戸時代からお白粉、紅、房楊枝、歯磨粉などの化粧品を売っていた有名な店である。

     『江戸名所図会』  長谷川雪丹 作

 浮世絵に描かれた柳屋のお藤

 お藤が有名になったのは、鈴木春信が浮世絵に描いたからである。看板に「かんぼく御やうじ所」柳や二平治とあり、浅草奥山銀杏木の下のお藤の店であることがわかる。
男性は男性は、美人を目当てに用事もないのに、しげく楊枝店に通い房楊枝や歯磨粉を買い、せっせと歯をみがき白くしたという。

 昭和初期に流行した歌に「向こう横町の煙草屋の看板娘」と歌われたが、美人の看板娘を置き客を呼び寄せたのは、いつの世でも同じである。

    
   『風流江戸八景 浅草春嵐』 鈴木春信作

             
                                                 
浮世絵に描かれた歯みがき風景
 

 一勇斎国芳が描く『十六利勘 朝寝者損者』には、若い女性が肩肌をはだけて房楊枝を右手に持ち、楊枝函の歯磨粉をつけて、歯をみがいている。
「うがい茶碗」、「楊枝函」、「かなだらい」が置いてある。
左上には、仏教の『十六羅漢』にちなんで、朝寝坊をいさめた文章が書いてある。

   
    『十六利勘 朝寝者損者』 一勇斎国芳作
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