《西洋の陶器の入れ歯は舞踏会で使った》 -欧米の入れ歯について-

 
                    
                     19世紀初め頃のパーティー(イギリス)(1815年)


1 入れ歯は紀元前から使われていた

  数千年以前の昔でも、虫歯や歯周病、摩耗により歯がすりへり、歯の神経が露出するなどにより、抜歯がおこなわれていた痕跡がみられる。
 地中海周辺の古代フェニキアのシドン(現在のレバノン・サイダ市)では、紀元前5世紀頃の墓から、下の前歯を金の針金で結んで固定したものが発掘されている。これと似たようなものは5000年くらい前のものとしてギーザのピラミッド付近からも発見されている。これらは歯が抜けないように隣の歯に縛りつけたもので、金の帯状の板で両隣の歯を土台とし、天然歯に縛って固定し、歯のない部分を補ったブリッジタイプの入れ歯もあった。
入れ歯は、容貌や発音の回復のために作られ、当時の権力者がその権威を保つためや貴婦人たちは、口元の引っ込みを回復し容貌を保つために、装飾用の入れ歯を作り食卓では取りはづしていたことが想像できる。入れ歯に関する話題は、当時、礼儀に反することとされていた。

                                                             


  シドンから出土した前歯を固定したもの
  『歯科医学の歴史』より

    エトルリア人のブリッジ
     『歯科のあゆみ』より
                 
                 エトルリア人の金製ブリッジ 『歯科医学の歴史』より

2 近代歯科医学の父と言われるフォシャール
  (Pierre Fauchard 1678-1761)の業績

 フランスの歯科外科医ピエール・フォシャールは、1728年に『歯科外科医』 “Le Chirurgien Dentiste”を発刊した。それまでの歯科は、徒弟制度で技術を習うことが多く、日本の香具師のような、旅をしながら人を集めて歯を抜く「歯抜き屋」もいた。
彼は、フランスで歯科を専門とする外科医として開業し、有名であった。彼は、自分の臨床経験を加えて当時の歯科医学を体系化したため、「近代歯科医学の父」と呼ばれている。この本は、ドイツ語・英語・日本語にも翻訳され、世界の歯科医学の原典となった。第二版(1746年刊)においては、総入れ歯についても記述している。
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