• ホーム   >   
  • 歯とお口の基礎知識   >   
  • 「外科手術の前には、虫歯の治療が必要」って?口腔ケアと手術の知られざる関係とは

「外科手術の前には、虫歯の治療が必要」って?口腔ケアと手術の知られざる関係とは

執筆者
神奈川県歯科医師会・厚木歯科医師会 会員 鍵和田信行


「外科手術を受ける前に歯科で虫歯治療をするように言われた」というような話を聞いたことはないでしょうか?
実は、虫歯に限らず、手術の前に歯科治療が必要なケースはままあるのです。それはいったいなぜなのでしょうか?
今回は外科手術の合併症と口腔ケアについてお話しします。

外科手術のとき悪さをする、口の中の細菌

口の中には、実はたくさんの細菌が住んでいます。虫歯や歯周病を起こす細菌もいます。湿度があり温かな口の中は、細菌の格好の温床にもなっているのです。口腔ケアを怠ると、細菌の数がどんどん増えてしまいます。
こうした口の中の細菌が、外科手術の際に悪さを起こしてしまうことがあります。実際、食道・胃・十二指腸や口腔内の手術を全身麻酔で行うとき、患者さんの口腔内が不潔だと、手術をした部位が感染を起こすリスクが高くなることが知られています。口の中の細菌は唾液とともに飲み込んでしまうので、手術した部位に感染してしまいやすく、そのために治癒が遅れてしまう可能性があるのです。

さらに、口の中の細菌は、実は肺炎の原因にもなってしまうことが分かっています。お年寄りは食べ物や唾液などが誤って気管の中に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」を起こしやすいことが知られています。口の中の細菌が食べ物などと一緒に肺に入り込むことで、肺炎を起こす原因になってしまうのです。こうした誤嚥(ごえん)性肺炎と呼ばれる肺炎は、手術後で抵抗力が下がった患者さんでは発症するリスクが高くなります。死に至ることもあるので、できるだけその危険は避けなければなりません。
こうしたさまざまな感染を防ぐためには、手術の前に、口の中のケアをしっかり行い、細菌の数をなるべく減らしておくことが必要なのです。

歯のぐらつきは、手術の前に必ず治療しよう

歯のぐらつきと、外科手術を行うことにはなんの関係もないのではないか。そう思う方も多いかもしれません。でも、ちゃんと治療を受けておかないと、手術のときに歯が折れてしまう危険があるのです。
全身麻酔をともなう外科手術の際には、人工呼吸を行う必要があります。口から喉の奥にある気管へ直径1cm程度の管(気管チューブ)を通して、酸素や麻酔ガスの通り道を開いておくのです。これを気管内挿管といい、喉の奥を見る器具(喉頭鏡)を使って気管へチューブを入れるのですが、その際に歯が折れたり欠けたりしやすいのです。特にもともと前歯がぐらついていると、歯が折れる危険が生じやすくなります。手術前に歯科治療をしっかり受けておきましょう。

また、全身麻酔の手術の場合、気管チューブを入れようとすると、口の中の細菌も気管に押し込むことになってしまうため、それによって肺炎を起こしてしまう危険もあります。

手術の前には、どんな歯科治療を受ければいいの?


外科手術の前に歯科治療を受けたほうがいい理由はおわかりいただけたと思います。ではどんな治療をすればいいのでしょうか。
まずは診察です。そして、虫歯などがあれば応急処置を行います。
ぐらぐらした歯があれば、歯の固定を行うか、抜歯をします。気管内挿管のとき歯を保護したりするためのマウスピース(口腔内装置)を作る場合もあります。
また、歯石取り、クリーニングによって口の中の清掃を徹底します。口腔内の歯垢(プラーク)を専門的に除去し、口の中の細菌の数を減らすことで、手術時の感染や、誤嚥性肺炎を防ぐことができます。もちろん歯磨き指導もしっかりと行います。
口腔ケアを行うことによって、平均在院日数が短くなったという報告もあります。口の中がきれいになったことで、手術部位の感染や肺炎などが減って退院するのが早くなったと考えられます。
さらに手術後も、口腔内の清掃が保てるように専門的ケアを行います。

実際の流れは?

実際にはどんな流れで歯科治療を行うことになるのか、気になるかと思います。
外科手術を受ける病院に歯科や口腔外科がある場合であれば、事前の歯科治療も同じ院内で行うこともあります。ですが通常は、入院前に外科の病院から開業医の歯科医院へ治療を依頼し、入院するまでの間に処置を行うことになります。
歯科治療をすべて終えてから手術をむかえるのが望ましいですが、どうしても入院するまでの期間がとれないことも多いため、基本的には応急処置となります。
ですので、日頃から歯科医院へ定期的に通院し、お口のケアに努めておくことが大事です。また、治療期間が短くても対応してもらえるかかりつけ歯科医があるといいですね。

神奈川県歯科医師会・厚木歯科医師会 会員 鍵和田信行

執筆者情報
鍵和田信行
神奈川県歯科医師会・厚木歯科医師会 会員

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

人気記事ランキング