インプラントとは(模型)

インプラントの疑問に答えるQ&A
納得して手術を受けていただくために

残っている歯を削ったりしないで失った歯の機能を回復ことができるインプラント治療、受けてみたいと考えているけれど決心ができない。これはインプラント治療をご検討される方に共通したお気持ちと存じます。

本項では、インプラント治療について十分にご理解されたうえで、安心して治療をお受けいただくためのQ&Aをお届けいたします。

インプラントのQ&A

Q1インプラント治療って、本当に良いですか?
A1

正しい説明を受け正しい理解をされたうえでお受けになれば、有益な治療法と言えます。インプラント治療には、「残っている歯を犠牲にしないで、失った歯の機能を回復することができる」という他の治療法にはない大きなメリットがあるからです。

しかしながら、インプラント治療は、むし歯や歯周病の治療のような「疾患の治療」ではなく、失った歯の機能を回復する「リハビリテーション」に近いものであり、リスクを負って止むを得ずする必要性がある治療ではありません。そして、他の治療法に比べ高価でもあります。

患者様におかれましては、ご自身のお体の状態やご要望を執刀医に詳しくお伝えになり、執刀医から充分な説明をお受けになったうえで、ご判断されることが賢明かと存じます。

>そもそもインプラントってどんな治療?

Q2インプラント手術に伴う危険性について教えてください。
A2

医療行為を行う際、一定の確率で発生する有害事象を偶発症または合併症といいます。インプラント手術に伴う偶発症には、次のようなものがあります。

1. 手術中の急変

インプラント手術中、手術とは因果関係なく、患者さんがもともとお持ちの持病が急性発症することがあります。

インプラント治療を行う歯科医院では、こうした事態に適切に対処するための準備をしていますが、これらの準備を義務付ける特別な法律はありませんので、準備の程度には差があります。

救命救急処置のための医療チームと設備を完備して定期的なトレーニングをしている歯科医院もあれば、簡易な対策に留まる歯科医院もあります。

どちらが良いと言うわけではありませんが、持病をお持ちの方は、その旨を執刀医に伝え、術中の安全管理体制についてご相談されとよろしいかと存じます。

2. 下顎管損傷

下顎臼歯部(かがくきゅうしぶ、下あごの奥歯)のインプラント治療時に起こり得る偶発症です。
下あごの骨には下顎管と呼ばれるトンネルがあり、この中を神経と血管が走行しています。このトンネルを傷付けると、下あご、下の歯、唇などが麻痺したり、深刻な出血を引き起こすことがあります。

こうした事故を避けるために、執刀医は、CT検査等によって下顎管の走行を詳しく調べ、インプラント治療によって下顎管を損傷する危険性がないかを判断します。

下顎臼歯部のインプラント治療をお受けになる際は、ご自身のインプラント治療が下顎管損傷の起こさずに安全に行えるかどうかの充分な説明をお受けになることをお薦めいたします。

3. 舌動脈損傷

下顎臼歯部(かがくきゅうしぶ、下あごの奥歯)のインプラント治療時に起こり得る偶発症です。
下あごの舌側には舌動脈という太い血管が走行しています。この血管を傷付けると致命的な出血を引き起こすことがあります。

こうした事故を避けるために、執刀医は、CT検査等によって下あごの形と舌動脈の走行を詳しく調べ、舌動脈をしないような治療計画を立てます。

下顎臼歯部のインプラント治療をお受けになる際は、ご自身のインプラント治療が舌動脈損傷の起こさずに安全に行えるかどうかの充分な説明をお受けになることをお薦めいたします。

4. 上顎洞損傷

上顎臼歯部(じょうがくきゅうしぶ、上あごの奥歯)のインプラント治療時に起こり得る偶発症です。
上顎臼歯部の上方は、上顎洞(じょうがくどう)という鼻腔につながる空洞になっています。一般に上顎臼歯を失うとその部分の骨の量が少なくなり、通常のインプラント治療ではインプラント体を上顎洞へ貫通させてしまうおそれがあります。

こうした失敗を避けるために、執刀医は、CT検査等によって上あごの骨の形と量を詳しく調べ、インプラント治療によって上顎洞を損傷しないかを判断します。骨の量が少ない場合には、上あごの骨を上方に持ち上げる上顎洞挙上術(ソケットリフト、サイナスリフト)を併用することもありますが、インプラント治療を断念することもあります。

上顎臼歯部のインプラント治療をお受けになる際は、ご自身のインプラント治療が上顎洞損傷の起こさずに安全に行えるかどうかの充分な説明をお受けになることをお勧めいたします。

5. その他の偶発症

上記以外にも、インプラント治療時に発生し得る偶発症があります。インプラント治療をお受けになる際は、執刀医と充分な話し合いをされ、信頼関係を構築されることが治療の第一歩ではなかろうかと存じます。

Q3痛くないですか?
A3

治療中の痛みは、一般的な歯科用麻酔薬で予防することができます。治療後の痛みも通常はありません。インプラントを埋入するあごの骨(歯槽骨-しそうこつ)そのものには痛覚(痛みを感じる神経)がないためです。

しかしながら、骨の中の細い血管や骨を覆う歯肉には痛覚があるため、治療によってこれらの組織にある程度の負担がかかると、術後に痛みを生じることがあります。この痛みは治療の失敗や異常を示すものではなく、痛み止めで緩和できる程度のものです。

執刀医はこれらの症状を術前の診断である程度予測することができますので、ご不安な方は、執刀医に事前にご確認されるとよろしいかと存じます。

Q4腫れますか?
A4

基本的に、通常のインプラント治療で歯肉、あご、頬などが顕著に腫れることはありません。
ただし、あごの骨の量が少なく、骨をつくる処置等のために、必要に応じて付着歯肉(歯や歯槽骨に付着した歯肉)を超えて切開剥離すると腫れることがあります。

この腫れは手術の失敗や異常を示すものでなく、通常、腫れのピークは術後3日までであり、遅くとも1週間以内には消失します。執刀医はこれらの症状を術前の診断である程度予測することができますので、ご不安な方は、執刀医に事前にご確認されるとよろしいかと存じます。

Q5手術時間はどのくらいですか?
A5

1本の手術につき、入室から退室まで1時間程度ではないでしょうか。切開から縫合までの正味の手術時間は執刀する歯科医師によって大きく異なりますので、お口を開けていることが苦手な方や体力に自身のない方は、事前に執刀医にご確認されるとよろしいかと存じます。

Q6歯周病でもインプラントをして大丈夫ですか?
A6

他の歯の歯周病により、埋入したインプラントが影響を受けることはありません。

歯周病は、歯と歯槽骨をつなぐ歯根膜(しこんまく)の炎症です。インプラントと歯槽骨との間にはそもそも歯根膜が介在していないため、インプラントを埋入した個所が歯周病になることはありません。

Q7心疾患の持病があるのですが、インプラント手術をしても大丈夫でしょうか?
A7

主治医に処方された薬剤を服用され、血圧や血糖、脂質などの臨床検査値が正常にコントロールされた状態であれば、基本的に手術は可能です。

執刀医に臨床検査の結果等を伝え、事前にご確認されるとよろしいかと存じます。

Q8骨粗鬆症の治療のためビスホスホネート製剤を服用していますが、インプラントをしても大丈夫ですか?
A8

ビスホスホネート製剤(BP製剤)を服用している患者様が、歯科治療をきっかけにあごの骨が露出したり壊死したりする「顎骨壊死(がっこつえし)」を発症することが報告されています。

各種ガイドラインにおいて、BP製剤の経口投与期間が3年未満で、ステロイドの服用、糖尿病、喫煙、飲酒、口腔衛生状態不良、化学療法剤の服用等のリスク因子がない場合は、歯科治療を行っても良いとされています。

実際に、BP系製剤を服用されている患者様のインフォームドコンセントの上に成立したインプラント治療において、良好な予後が確認されています。

しかしながら、インプラント治療はむし歯や歯周病の治療のような「疾患の治療」ではなく、失った歯の機能を回復する「リハビリテーション」に近いものであり、リスクを負って止むを得ずする必要性がある治療ではありません。

患者様におかれましては、ご自身のお体の状態を担当医にお伝えになり、担当医から充分な説明をお受けになったうえで、ご判断されることが賢明かと存じます。

>インプラント治療は誰でも受けれますか?

Q9糖尿病をもっていますが、インプラントをしても大丈夫ですか?
A9

内科で血糖値を正常に保ち、歯科で口腔衛生状態をコントロールしていれば、問題はありません。

Q10年齢制限はありますか?
A10

あごの成長が止まる18歳以降であれば、年齢制限はありません。

Q11耐用年数を教えてください。
A11

インプラント体と歯槽骨との結合(インテグレーション)は、全身疾患などの影響を受けない限り半永久的です。インプラント体に取り付ける人工歯(上部構造)の耐用年数は、一般的な歯科診療に用いる補綴物(ほてつぶつ)等と同様です。おかかりになられる医療機関でインプラント治療の保証制度を事前にご確認されるとよろしいかと存じます。

Q12金属アレルギーをもっていますが、インプラントをしても大丈夫ですか?
A12

通常は大丈夫ですが、インプラント体の組成やそれに付随する材料によってアレルギー反応が希に生じ得ます。

金属アレルギーは、原因となる金属イオンと体内の免疫細胞とが過剰に反応して起こります。インプラント体の組成は純チタンあるいはそれに近いものが現在の主流で、チタンは大気に触れると表面に酸化チタンの皮膜を形成し金属イオンを溶出しづらい金属です。このため、チタン製のインプラント体は骨の中に入れてもアレルギー反応が起こりづらいと考えられています。

インプラント治療をお受けになった方にチタンアレルギーのパッチテストをしたところ、0.6-1.7%の頻度でアレルギー反応が報告されていますが、臨床症状を伴わない場合がほとんどです。また、インプラント治療後のアレルギー反応の臨床症状の報告もありますが、原因は、インプラント体そのものではなく、インプラント治療に付随するチタン製品の切削片やインプラント周囲炎の影響が示唆されています。

チタンに限らず金属アレルギーをお持ちの方は、その旨を執刀医に伝え、説明をお受けになるとよろしいかと存じます。

Q13インプラント後にMRI撮影をしても大丈夫ですか?
A13

インプラント体の体積は、一般的な歯科治療に用いられる金属製の補綴物(かぶせもの)等と同等の体積ですので問題はありませんが、検査を受ける際は、臨床検査技師にインプラント治療を受けたことを申告され、磁性アタッチメントが付与された義歯は必ず外してから検査をお受けになってください。

Q14医療費控除を受けられますか?
A14

はい。医療費控除の対象になります。

>医療費控除の具体的な還付金例について

歯医者さんからのメッセージ

繰り返しとなりますが、インプラント治療には、「残っている歯を犠牲にしないで、失った歯の機能を回復することができる」という他の治療法にはない大きなメリットがあります。しかしながら、インプラント治療は、むし歯や歯周病の治療のような「疾患の治療」ではなく、失った歯の機能を回復する「リハビリテーション」に近いものであり、リスクを負って止むを得ずする必要性がある治療ではありません。

患者様におかれましては、ご自身のお体の状態やご要望を執刀医に詳しくお伝えになり、執刀医から充分な説明をお受けになり、その過程の中でお互いの信頼関係を構築され、その後に、慎重にご判断されることが賢明かと存じます。

神奈川県歯科医師会・秦野伊勢原歯科医師会 会員
神奈川県伊勢原市 ハート歯科 添田博充

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

もくじ