受けていますか?かかりつけ歯科医による定期健診

いつまでも健康でいきいきと自分らしく暮らしていくためには、地域や職場で行われる定期健診を欠かさずに受けることが前提条件となります。
健康長寿を目指すには、身体だけでなく歯とお口の健康を守ることがきわめて重要です。
ここでは、かかりつけ歯科医による定期健診の意義、一般の定期健診との違い、健康増進に与える影響などについて解説します。

歯科定期健診は病気の発見だけでなく、定期的な予防処置(メインテナンス)も

県民の皆さんのなかには、医療機関で治療が終了したあと、「今後は定期健診(検診)にいらしてください」といわれた方も多いことでしょう。
自治体や職場の健康診断、人間ドックで行う検診は、病気の発見が目的です。
血液検査や画像診断などの検査で、「がんになっていないか」「心筋梗塞や脳梗塞の原因となる高血圧や糖尿病、脂質異常症がないか」「消化管に何かできてやしないか」など、病気の有無を調べます。
このような一般の定期健診を歯科に置き換えますと、むし歯や歯周病、口腔がんの発見ということになります。

歯科でいう健診とは、実はこのように検査で病気を発見するだけでなく、定期的にメインテナンスを行うことを主な目的としています。
メインテナンスとは、発見された異常を修正して大きな病気が起こるのを予防したり、健康な状態を維持したりすることを指します。言い換えれば、定期予防処置またはリスク低減処置ということになります。
つまり、歯科の定期検診は病気を発見するための検査に加え、病気の発症を抑えるための具体的かつ効果的な予防処置を行うことを目的としているのです。

かかりつけ歯科医をもつことは健康長寿の条件

一般の定期健診が自治体や職場で行われるのに対し、歯科の定期健診は「かかりつけ歯科医」によって行われます。
かかりつけ歯科医には、「歯科医療だけでなく医療・介護に対する幅広い知識と視点をもち、地域住民の乳幼児期から高齢期までのライフステージに応じた、生涯にわたる地域医療や保健指導を提供する」という役割が求められています。
つまり、かかりつけ歯科医は、日ごろから地域住民の皆さんの歯や口の健康を守り、このことを通して生涯にわたって心身の健康に貢献する立場といえます。

かかりつけ歯科医が、実際に地域住民の健康長寿に寄与していることを示す調査結果がありますので、ご紹介しましょう1)。
16,462 人の在宅高齢者に自己管理の状態に関するアンケート調査を実施し、かかりつけ歯科医の有無や長寿を決定する要因などを6年にわたって調べました(図)。

その結果、かかりつけ歯科医がいる人は、そうでない人に比べ統計学的にみて有意に生活様式が著しく良好であることがわかりました(p<0.001)。
また、かかりつけ歯科医がいる人は、そうでない人より6年後の生存率が明らかに高いことが判明しました(p<0.001)。
さらに、かかりつけ歯科医をもっている女性は、そうでない女性より6年後死亡率が明らかに低いことが明らかになっています(ハザード率、.696;95%信頼区間、0.56-0.87)。

歯科定期健診を受けると健康寿命が延びるわけとは??

このように、かかりつけ歯科医をもつと、男女ともに生存率が高くなり、かかりつけ歯科医の存在が特に女性において生存を決定する重要な因子であることが示唆された意義は大きいといえるでしょう。
歯科の定期健診は、お口の健康はもちろんですが、身体の健康も守ってくれます。その理由は、以下のように考えられています。
歯周病のメインテナンスは、五感で感じない慢性炎症を無くすことで血糖上昇を防いでくれます。また、お口の細菌が、歯肉の隙間から血流に入り生じる歯原性の菌血症を防ぐことで血管壁や多臓器にお口の細菌の侵入防止にもなります。
そのような理由で歯周病のメインテナンスが、生活習慣病の発症予防、重症化予防になるのです。

では、義歯やインプラントが必要かどうかなど、噛む機能のチェックはどのように健康寿命と関係しているのでしょうか?
補綴治療(噛む機能回復)は、うどん、カレーライスなど糖質偏重食(高カロリー低栄養食)を改善し、糖質が大量に入るのを防ぐことで、生活習慣病の発症予防、重症化予防になるのです。
さらに噛む機能低下は、お肉などタンパク質摂取量が減るために、タンパク質低栄養を招きます。数年の間に手足が細くなるなど骨格筋減少症を経由してフレイル(HPのオーラルフレイル記事参照)と呼ばれる虚弱状態につながります。
補綴治療(噛む機能回復)は、タンパク質低栄養を改善しフレイルの発症予防、重症化予防になるのです。
こうした理由により歯科で行う定期健診は、生活習慣病を水際で防ぐうえで、きわめて重要です。
かかりつけ歯科医により歯科の定期健診を受けることは、生活習慣病の発症や重症化を防ぎ、全身的な健康状態の維持・向上に密接に関係しているといえます。

ところが、残念なことに、日本では定期的に歯科を受診する人の割合が他の主要国と比べ少ないことがわかっています(ライオン株式会社調査)。
たとえば、スウェーデンでは約80%、米国では約70%と高率であるのに対し、日本では約16%に過ぎません。
健康寿命を延ばすという国民的な課題を克服するためには、ぜひともかかりつけ歯科医師による歯科健診の受診率向上が望まれます。

幸い、神奈川県では歯科医師会会員により高水準の歯科医療を提供できる体制が整備されています。
県民の皆さんの健康づくりのため、地域や職場の定期健診だけでなく、かかりつけ歯科医師による歯科の定期健診に努めていただきたいと切に願っています。

神奈川県歯科医師会・大和歯科医師会 会員 武内博朗

■参考文献

1)The effects of Family Dentists on Survival in the Urban-dwelling Elderly. American Journal of Medicine and Medical Science 2013; 3(6), 156-165, R. Tano, T. Hoshi, T. Takahashi(緒方有希子氏の原著論文翻訳より改変して引用)
2)武内博朗編著 花田信弘監修 歯科発 アクティブライフプロモーション21 ~健康増進からフレイル予防まで~ デンタルダイヤモンド社,2017.
3)武内博朗、花田信弘:欠損回復から代謝・体組成を改善する歯科補綴への取り組み.
ヘルスサイエンス・ヘルスケア VOL17:december15, 2017.
4)武内博朗:咀嚼機能回復が体組成・代謝の改善におよぼす影響. ヘルスサイエンス・ヘルスケア, Vol.12(2):97-103, 2012.

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