アライナー矯正って何!? ~正しく知ってトラブルを防ぎましょう~

メリットばかりではありません

皆さんは、「アライナー矯正」という言葉を見聞きしたことがおありでしょうか。

アライナー矯正とは、弾力性のある薄い透明なプラスチックでできたマウスピース状の装置を口腔内に装着し、歯ならびを矯正する治療のことです(図1)。このため、「マウスピース矯正」ともいわれています。

図1 カスタムメイドのアライナー型矯正装置

 

これは、患者さんのもともとの歯ならびとは微妙に異なるアライナーを何種類か作成し、決められた順番通りに口腔内に毎日22時間以上装着することで、少しずつ歯ならびを整えていこうというものです。

通常のブラケットやワイヤーを使った矯正治療(図2)に比べ、装置が透明で見た目がよい、着脱式なので歯みがきや食事がしやすいといった利点があり、使用を希望される患者さんが増えています。

図2 通常の歯列矯正治療

 

しかし、実際にはこの治療でどんな歯ならびでも矯正できるというわけではなく、使い方も容易とはいえません。

アライナー矯正により効果が期待できる症状なのかどうかをくわしく診断したうえで装置をつくり、使用方法を十分に理解して適切に使わないと、思わぬトラブルの原因になる可能性もあります。

 

電話相談窓口にはこんな問い合わせも

実際、神奈川県歯科医師会の電話相談窓口には、アライナー矯正を受けた患者さんから「なかなか治らない」といったお悩みが寄せられています。

また、「治らないうえに追加の治療費を請求された」という事例もありました。

こうしたトラブルは、担当医が適応症の判断を誤っていたり、矯正治療の技術や経験が不足していたりすることによるものではないかと思われます。

さらに、治療費やキャンセル料についてのご相談もあり、「治療前の段階でやめることを申し出たら、キャンセル料30万円(全体の治療費90万円)を請求された」といった訴えも寄せられています。

このようなアライナー矯正をめぐるトラブルを未然に防ぐため、気を付けておきたい点をまとめましたので、参考になさってください。

 

■アライナー矯正で効果が期待できるかどうかを確認!

アライナー矯正を行って期待通りの効果を得るためには、患者さん1人ひとりの歯ならびや噛み合わせなどの状態をくわしく診断し、適切なアライナーを制作して使用する必要があります。

また、患者さんの歯並びや噛み合わせなどの状態によっては、アライナー矯正では治療できなかったり、十分な効果が期待できなかったりすることもあります。

たとえば、「受け口」や「しゃくれ口」などと呼ばれる骨格性下顎前突症(こっかくせいかがくぜんとつしょう)は、アライナー矯正の適応症ではありません。

歯ならびを広げる場合でも、アライナー矯正では歯ならびを外側に広げたり、臼歯を奥に動かしたりするのは容易ですが、小臼歯を抜いたところに大臼歯を寄せるように移動するのはたいへん難しいといった事情があります。

 

■治療計画などを文書化してもらい、納得したうえで治療に臨みましょう

アライナー矯正をめぐるトラブルを防ぐためには、歯科医師が患者さんに十分な情報提供を行い、患者さんの理解と同意を得たうえで治療に臨むことが大切です。

このようなインフォームド・コンセントをよりよく進めるためには、歯科医師から治療計画、治療費の内訳、キャンセル料、治療中断時の精算方法、治療のリスクなどについて口頭で説明を受けるだけでなく、文書化したものを入手しておく必要があります。

また、社会人の方がアライナー矯正を希望される場合、転勤などで転院したときのことなどを想定し、あらかじめ治療費の精算について決めておくとよいでしょう。

治療費の精算については、下記の日本矯正歯科学会や日本臨床矯正歯科医会のホームページを参考になさってください。

 

■治療上の注意事項やリスクをしっかり認識しましょう

アライナー矯正の副作用の1つとして、「咬合位不安定(こうごういふあんてい)」を生じることがあることを認識しておく必要があります。

アライナー装置は着脱可能ですが、長時間にわたって歯を噛み合わせる部分(咬合面)をおおうことになりますので、装置をはずして食事をしたとき、以前とは感覚が違って「どこで噛んでいいのかわからない」というような症状が出ることもあります。

また、アライナー装置により奥歯が押し込まれるかたちになり、前歯が噛み合っていても奥歯が噛み合わないといった症状が出ることもあります。

アライナー矯正は装置の装着時間が長いほど効果が高まる半面、副作用発生のリスクも高まります。

アライナー矯正を希望される方は、このようなデメリットやリスクがあることを認識し、十分に納得したうえで治療を始める必要があります。

 

■ネットなどで目にするのは、うまく治った患者さんの写真です

インターネットや書籍などで目にするアライナー矯正の写真の多くは治療に成功した患者さんの例であり、その陰にうまく治らなかった患者さんも少なからずおられます。

誰もが写真のような効果を得られると思うのは誤解であり、歯科医師にはどこまで効果が期待できるのかを確認しておく必要があります。

あわせて、アライナー矯正で十分に治らなかった場合の代替治療法についても説明を受けておくことが大切です。

 

【参考】

海外で作製されたカスタムメイドのアライナー型矯正装置は、歯科技工法上の矯正装置にも、薬機法上の医療機器にも該当しないものです。

このため、厚生労働省はこうしたアライナー矯正装置を使って治療する際、「歯科医師が患者への十分な情報提供を行った上で患者の理解と同意を得ることを遵守するとともに、歯科医師の全面的な責任の下で使用されたい」との見解を示しています。

このことを踏まえ、公益社団法人日本矯正歯科学会は「海外カスタムメイド矯正装置の使用にあたっての遵守事項」を次のように定めています。

1.海外カスタムメイド矯正装置は、日本国の薬機法上の医療機器および歯科技工法上の矯正装置に該当していないことを患者に説明すること。

2.海外カスタムメイド矯正装置以外に日本国の薬機法上の医療機器および歯科技工法上の矯正装置による治療方法が存在することを患者に十分説明すること。

3.海外カスタムメイド矯正装置を用いた治療を行う歯科医師は、個人の全責任において使用すること。

4.海外カスタムメイド矯正装置の使用に当たり、上記内容を患者に十分説明し、理解と同意を得て同意書を作成すること。

日本矯正歯科学会ホームページ

http://www.jos.gr.jp/news/2017/0323_00.html

日本臨床矯正歯科医会ホームページ

https://www.jpao.jp/15news/1525trendwatch/vol23

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